星空に舞う銀
「里桜さーん!」
あれから2日後。
そう声をかけてきたのは後輩の矢作夏樹。
その隣には彼と同期の壱屋京介がいる。
2人とも、翔をとてもよく慕っている高専の1年だ。
とくに矢作夏樹は翔のことを先輩というよりも兄貴のように慕い、深く尊敬しているのは誰の目にも明らかだった。
「お土産ありがとうございました〜!なかなかお会い出来なくて焦りましたよー!」
「あー全然いいよ。」
「ところで天馬さん知りませんかー?」
とても童顔な彼はキョロキョロすると本当に子供のようで可愛らしい。
つい顔が綻んでしまった。
「翔は多分、もう自室に戻ったんじゃない?こんな時間だし。」
時計の針は20時を指している。
風呂上がりの里桜も部屋に戻るか、翔の部屋に行ってみようか迷っていたところだ。
「そうですかぁ。…あれ?里桜さん
首…虫刺されぇ??あ、魔物にやられた系っすか?」
そう言って首筋を目を丸くして見つめる夏樹に、一気に顔が熱くなり慌てて手でアザを隠した。
2日たってもこれはまだ消えていない。
察するに、相当強く吸われた…っぽい。
「ん、そ、そう。こないだの任務でね…」
「大丈夫ですかー?小篠さんに反転術式で治してもらえばいいのに〜」
瞳は治癒魔術の達人だ。
彼女の生み出すエネルギーによって、人間を治癒することができる。
治癒魔術の使い手は希少な人材である。
里桜が戸惑ったように苦笑いをしていると、全てを察したかのように京介が横目で夏樹を見やり、咳払いと共に低い声を出した。
「……矢作…」
「え?」
「君という人は…」
「え、なに?」
純粋無垢な仔犬のような顔をして仏頂面の京介を覗き込む夏樹。
「まぁ…私のこの目を見て察せられるほど君が大人ではないことは知っていますが…」
「だからなにさ!」
京介は気がついていた。
里桜が翔のことを先程、翔と呼んでいたことにも。
「…まぁいいです。あとで話しましょう。
里桜さん、お土産をありがとうございました。翔さんにもよろしくお伝えください。では失礼します」
いつもの冷淡で抑揚の無い声色で言いながら、京介は夏樹の腕を掴んで踵を返した。
夏樹は引きづられるようにしてぐんぐん引っ張られていく。
「ちょ、ちょっと壱屋!翔さんのところへっ」
「…なるほどやはり君は空気を読むということから学ぶべきですね。私のストレスが増えました。」
「はあぁ?!うぉいーっ!」
里桜はポカンとした表情のままそれを見つめたあと、深く溜息を吐き首筋を擦る。
「やっぱこれ消しとくべきだった…かな…」
「里桜さーん!明日会えたらまたーっ!」
引きづられながらも大きく手を振る夏樹に苦笑いで手を振り返した。




