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おぶってなんとか鬼頭の元へ運んでいくと、
鬼頭の第一声は、「転校生なんぞ…」
から始まり、
「…んなっ?!?!?!」
あまりの驚愕ぶりに、幸愛は腰を抜かしそうになるほど驚いた。
「な…なんですか。」
「……どういうことだ…
あぁ…そこに寝かせるといい。」
学長室の大きなソファーに横たわらせると、鬼頭はサングラスを取ってまじまじと彼女を覗き込む。
幸愛は一先ずここまでのことを説明した。
「……間違いない…
弥生…里桜……
どうなっている?」
「…お知り合いですか?
ていうか、そもそもここの制服着てるわけだし、知ってなきゃおかしいですよね。」
「……知ってるも何も…こいつは俺の…
いや、だがこんなことって…」
ぶつぶつと何かを呟きながら冷や汗を拭き始めた。
幸愛はなにもかもが意味不明すぎて一先ずスマホを取り出す。
「とりあえず昴先生に来てもらいます?
今、俺から電話しますんで。」
「あ、あぁ……」
鬼頭はまだ狼狽している。
もしも本当に彼女だったとして、10年も経った今、なぜここへ?
特別な魔術の類?
特別な魔物の類?
もしくはこれ自体が、夢か幻覚か?
「なぁ…幸愛…」
「…はい?」
「俺を1発殴ってくれないか。」
「……は?」
「いいから殴ってくれ!」
幸愛は小さくため息を吐くと、思い切り鬼頭にパンチを入れた。
ズドドド!!
あ、やべ。
ちょっとやり過ぎた?
そう思いつつも、真顔のまま、
床に転がっている鬼頭に手を差し伸べる。
「……ゆ、夢ではない…ようだな…」
「でしょうね。…血が出てますよ。」
この事実は幸愛に伝えるべきか否か…
いや、今はまだやめておこう。
とにかく状況が掴めん。
「…はぁ…幸愛、悪いが、頭を冷やしてくる。ついでに傷も。その間、こいつを頼めるか。」
「…分かりました。」
鬼頭は顔色の悪いまま傷を押え行ってしまった。
幸愛は、顔を顰めながら頭を搔く。
「なにがどうなってんだ、ったく…」
そう呟きながら、濡れたタオルを用意する。
里桜の隣に腰掛け、
前髪を退けると、額の汗を拭った。
よく見ると…
ピアスがすごいな…。
術具の類か?
顔に着いていた僅かな汚れを擦った時、
里桜の瞼が開いた。
「あ」
「…ん…あれ?」
視界を埋めつくしているのは、先程の少年の顔。
驚いて目を見開くと、幸愛は困ったような顔をした。
「大丈夫ですか。さっき倒れたんだけど…」
「…う、うん…ごめん、
麻宮くん…だよね?」
幸愛が頷くと、里桜は少しだけ表情を緩めた。
持っているタオルに気がついたのか、里桜が慌ててまた口を開いた。
「あ!ありがとうっ…
看病してくれてたんだ…!」
「あ、はぁ…」
「!?え…麻宮くん、怪我してるよ?!」
里桜の視線が手元にある。
よく見ると、先程鬼頭を殴ったからか、人差し指の付け根あたりにかすり傷ができていた。
幸愛は表情ひとつ変えず、
あー…これはーと声に出した瞬間、里桜に手を握られていた。
「いっ、たそう…大丈夫?」
「…大丈夫です。」
「あぁ、そうだ。応急処置だけど…」
と言いながら絆創膏を取り出すと、そこに貼り付けた。
全てが一瞬のことすぎて、幸愛は呆然とする。
「…あ…ありがとう、ございます」
「ううん!お礼を言うのは私の方だから!
わざわざここまで運んできてくれたんだよね!」
満面の笑みで手を握ったままそう言われ、幸愛の鼓動が1つ跳ねた。
目を合わせていられなくなって視線を落とすと、あることに気がつく。




