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「映画か…懐かしいな。

まだこんなもんがあるんだな……」



そう言って、クマはテーブルの上の数々のDVDを眺め出した。


クマの中に、みんなでしょっちゅうDVDを観ながら騒ぎまくっていた過去の光景が浮かんだ。



「…??? これが観たいの?じゃあこれね!」



クマが手に取り凝視していたプリンセス物の何かをひったくってセットする。



数分ボーッとそれを眺めていたが、大洋もクマも、ほとんど観ているようで観ていない。



「なー、クマぁー、

正しい死って、なにかな?」


「…あ?」


「こないだの任務でさ…人が死んでて…助けられなかった上に、俺が暴走しちまって…

目の前で親友が死んだんだ。

なんかー…わかんなくなってきててさ…」



クマは短く息を吐いた。

そして自分の首にかけてあるものにようやく気がついたかのようにそれを触りながら言った。



「死というもんは、実は人間にとって…最大の祝福かもしれねぇ。死ぬよりも、生きているほうがよっぽど辛いときが何度もあんだろ。人間は、みんなに愛されているうちに消えるのが一番だ。」



その言葉に、大洋は俯いて拳を握った。


「うぬぼれてた…。俺はわりと強いと思ってた。

死に時を選べるくらいには、強いと思ってたんだ。でも違った。俺は……弱い。」



「なぜそんなに死に執着してる?

なぜ生については考えない?」



「…考えてないわけじゃない。

ただ…怖いんだ。俺自身のことだけじゃなくて、俺の周りの人たちも、その人たちの大切な人たちだって…みんな……死に様くらいは選」


「死を恐れることは、自分が賢くもないのに賢いと思うことと同じだ。生きるための唯一の方法は、自分がいつか死ぬことを忘れることだ。

だからそーいったことは忘れてただ強くなることだけに執着しろ。死に執着すんな。」



クマは仏頂面で言葉を被せた。

なぜ人間はこんなにも何かを恐れ、深く考え、ちょっとしたきっかけがなにかしらんが、絶望する?

つくづく弱くてうんざりする。



「死が訪れた時に死ぬのはお前なんだ。

だからお前の好きに生きりゃいーだろーが。

死の恐怖は、解決されない生の矛盾の意識にすぎない。」



クマはキッパリそう言っていちごミルクを吸った。





「…それじゃダメなんだ。俺は呪術師の道を選んだんだから」



「なぜ、選んだ?」


クマは今まで、誰にも呪術師を強要したことも勧めたことすらもない。

七海にも伊地知にも、どちらかというと好きに生きるように言ってきた。

単純にそれは、他人に命を賭ける、またはその逆を経験し続けていられるほど、人間は強くはいられないからだ。



「キッカケは親友。俺は今まで、誰に何言われても何にも感じないような奴だったんだ。でも………初めて、たくさんの人の役に立ちたいって…」



大洋は少し明るく言った。



「俺が死を考えるのはさ、死ぬためじゃない。

生きるためなんだ。

どのみち死ななきゃなんねーならさ、

俺は納得して死にたいんだ…」





"お前強いんだからさ…!

こうして誰かを…救おうとすることを諦めんなよ…!

いいな?"



死に際の親友の言葉が脳裏に反芻する。





「俺はさ…親友に呪いかけられてんだ」


「ガキ同士、何言い合ってたか知らんが、逆にてめぇがてめぇを呪うような生き方だけはすんなよ」



その言葉に、大洋は目を見開いた。


魔術高校に入学する間際、鬼頭が言っていた言葉を思い出す。



"魔術師は後悔の連続だ。

何を選択してもどう生きても後悔する。

だから、死ぬ時も必ず後悔する。

その親友のことも。"





クマはいちごミルクを吸いながら横目で大洋を見た。

大洋はどこか切なそうな笑みを浮かべている。



「…お前も強くなるしかねぇな…

よく生きることは、よく死ぬことでもある。

わかるか?一生懸命に生きたものは、納得して死を受け容れることが出来るっつー意味だ。」


大洋はハッとしたようにクマを見る。

クマはいちごミルクを置いて、んんーっと伸びをした。



「…生まれるということはな、

死ぬということの "約束" なんだ。」



「……やく…そく…」



クマは何事も無かったかのようにテーブルの上のDVDをバラバラと漁り出した。


「……これを観て強くなんのか?」


「あ…さぁ?昴先生がそう言うから〜…」


「んなことより、なんかおもしれ〜話しよーぜ。宿儺じゃねぇが、おいらも長い間、けっこー退屈してたんだよなぁ〜」


その言葉に、大洋は一瞬ポカンとした表情を見せたが、すぐに笑顔になった。


「するする〜!

クマはなんか面白い話ないの〜?!」


ついている映画の音量は下げられ、ただのBGMになっていた。


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