2
「君は政春とおんなじ目をしとるなぁ…」
目を細めて優しげに見つめてくる楓の空気が、なぜかどことなく寂しげに見えた。
「…やめてください。そんな有名暗殺者と血が繋がってるなんて思いたくないんです」
「なんでや、もっと光栄に思うべきやろう?パパは相当強かったで。このうちでさえ、歯がたたんかったもん」
「ふふ、僕も。かなり手こずったねぇ。
僕の親友も、ほぼ殺されかけたし」
「うちなんてもうちょいで眼球くり抜かれそうになったわ!」
「あー!僕も僕も!しかも僕に負けず怠らずイケメンだから、そーとーチヤホヤされてたらしくて」
「…馬鹿にしてるんですか」
「幸愛くん」
ムッとイラついている幸愛に、
楓が突然真面目な声色を被せる。
「君の才能はね、自覚がなくても誇るべきものなんだ。
今は蕾でも、今後必ず開花していく。
それを君が制御できた時、きっとこの世界を変える。」
………は?
何言ってんだ、この人……
またからかっているのかと思ったが、
隣にいる昴も至って真剣そのものの顔をしている。
「でもね…最大の壁になる存在がまだいる。」
「…?…魔術界の敵ですか?」
思いもよらない言葉に驚いて、そう問いかけると、楓は視線を落とした。
紅茶の波紋の中に、楓の歪んだ顔が映っている。
「私の人生の最大の失態や…」
「…え……?」
「伊集院 才輝。
姉の息子。……私の…実の甥だよ。」
目の前で死んだ姉…
守れなかった姉…
連れ去られた赤子…
守れなかった赤子…
才を重視したうちの家系、伊集院家は
最強と持て囃されていた姉が密かに産んでいた赤子の存在を知り、姉から奪う算段を立てた。
同家系以外との婚姻、子作りは禁止されていたからだ。
姉は私のことも信用できなかったのだろう。
相手のことはひた隠しにしていた。
だから知らなかった。
姉と赤子を置いていったろくでもない男だということ以外は。
そんな御法度を犯した姉と赤子を追う、うちの当主たちの手先共。
姉は命を賭して才輝を守った。
しかし…才輝は連れ去られた。
姉は死ぬ間際に男の名を教えてくれた。
それから探し回ったさ。
死に物狂いで。
そうして見つけた。
エルサルバドルの魔術の聖地で…。
男の名は……
麻宮 政夏
麻宮政春の双子の兄だった。
私は政夏を恨んでいた。
お前のせいで姉は………
そう言って殺そうとした。
でも…
やむを得ない事情があったことと、本当に姉と愛し合っていたことを知った。
なにより、政夏の魔術界に対する熱意と取り組みに、私は一種の感動を覚えた。
しかし私は、せめて才輝のことは取り戻せと懇願した。
「それなら心配ない」
「…は?」
「もうとっくに私の弟が保護している」
また私は探し回ることになった。
何が心配いらないだ。
この目で全てを確かめるまでは、何も安心できない。
そもそも私は、自分以外は信用していない人間だ。
才輝は姉にも政夏にもよく似たとても美形の顔をしていた。
しかし、当然見ず知らずの私のことを、あの煩わく自分を虐げていた伊集院家の奴だと認識したのだろう。
私が驚くほどの、とてつもない威力で攻撃してきた。
そうして姉の旦那、才輝の父である政夏にそっくりの顔の男…麻宮政春が出てきた。
私が事情を説明する隙を一瞬たりとも与えずに、私を倒した。




