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「ホントに来るんですか?その人。

もうかれこれ1時間は経っちゃってますけど」



とあるホテルのラウンジで、

豪華なアフタヌーンティーセットを楽しんでいる昴を前に、幸愛の表情は完全にうんざりしている。



「いやさー、あの人いっつもこうなんだよ。

だからこっちもあえて2時間後でセッティングしたんだけども」


「はぁああ?!じゃあ俺らもう3時間も待ってることになるじゃないですか!!なんなんすかその人!」


「まぁそう言わずにさぁ、気楽に待とうよ。

ほらっ!ここのスコーン絶品なんだよ♡」


幸せそうな顔でもぐもぐとスイーツを堪能しながらスコーンをさらにとって渡してくる昴。

幸愛の顔は引き攣っている。



「…先生まさか…これ食いたかっただけなんじゃ…」


「んーっ♡うっまい♡あ、写メるの忘れてた」


「はー…だいたい、その人本当にS級有名魔術師なんですか?」



「よぉぉお!神塚ぁ!数年ぶり!!」



突然の声にビクッと跳ね上がる。

ラウンジに響き渡るあまりにも大きなその声に、優雅にお茶していた周りの人間たちの視線が集まっている。

大きなスーツケースを引き摺りながら満面の笑みで手を振ってくる金髪ショートヘアの女。



「待たせたな〜ぁ!ふぃい〜疲れたぁ〜

よっこらしょっと…」



幸愛は目の前に座った女に空いた口が塞がらない。



「なんや、美味そうなもん食っとるやん!うちもうちも!」



「お疲れ様です、楓さん。

何頼みますー?」



メニューを見ながら何やら

わーきゃーやりはじめ、ようやくオーダーが済んだところで自己紹介を始めた。



「おぉ、そんで君が例の麻宮幸愛くんやな。うちは伊集院楓。仲良くしよなー!」



「は、はぁ…」



全然任務を受けずに海外をふらふらし、いつも消息不明のS級魔術師、伊集院楓とはこの人のことかと幸愛はいろんな意味で圧倒されていた。


「あっ、これもーらいっ」

「あぁっ!それ1個しかないマロンクリームの」


などとやり始めている子供のような2人を前に、幸愛は冷や汗をかく。


S級はなぜこんな変な人が多いのか…

最強になると皆イカれてこうなるのか?

それともイカれてるからS級になれるのか?



「で、楓さん、これが例のアレ。

ずっと渡したかったんだけど楓さん全く音沙汰なかったから」



そう言って昴が渡したものは、エルサルバドルの国鳥のキーホルダーだった。



「おー、サンキューな。

あれか…天馬に返すよう言われたんか」



それを受けとり、初めて複雑そうな表情をする楓に思わずハッとする。



「…天馬のことは……」


「楓さん、何も言わないでください」



何かを言おうとしていた楓の意図を汲んでか、昴は笑って息を吐いた。



「でも…」


「そんなことより楓さん、今日のメインはこの子なんすよ。麻宮幸愛くん」



突然視線が集まり、幸愛は目を丸くする。



「あー、うちが1番興味持ってたんの実の息子やな」



楓の表情が一気に変わり、その笑みが気味悪く見えた。

父親のことは、幸愛が昴に連れてこられる際の幼少期にある程度は聞いた。



「麻宮政春ほどじゃあないんですが、やはり血が繋がっているからか、稀に驚くほどの魔力を発動するんですよ。なんとか訓練して、普段は制御できてますけどね。」



「ほぅ…そうだろうね」



凝視してくる楓の目の奥がギラギラと揺れだした。

その君の悪すぎる瞳に、幸愛は目を逸らそうとしたのだが、なぜだか1ミリも動けなくなっていることに気が付いた。

その大きな目の奥に、まるで吸い込まれるようにして思考が働かなくなる。




「……ん。よし、おーけ。」



その瞬間、プツンと張り詰めた糸が切られたかのように身体と意識が元に戻った。


はぁはぁと乱れた呼吸を整える。




「驚かせてすまんな、幸愛くん。」



「いっ…今っ、何をっ……」



「なぁに大したことやないよ。

君が意図せず育ててしまっている己の中の魔力を、ちょいと貰ってあげたのさ」



その言葉に目を見開く。


この人は……まさか……


他人の魔力を吸い取る能力があるのか?!



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