解決されない生の矛盾
今年から魔術高校に入学してきた生徒に、
赤嶺大洋
がいる。
彼は、麻宮幸愛の任務地で発見された、中途半端に魔力を持つ側の人間だった。
幸愛が魔物を退治しに行った際、1人で闘っていたのが大洋だった。
それが、ありえないほどのパワーで暴走していたたらしい。
その時にいろいろあり……
幸愛が連れてきたため、大洋はこの高校の寮に入って魔力のコントロールを学ぶことになったのだ。
しかし、大洋は今、目を点にしている。
隣には仏頂面の幸愛がいる。
「えぇー…先生の言ってたのって…これぇ?!」
「うん、そうだよ、大洋すげー会いたがってたじゃん」
大洋は、渡されたテディベアの両脇を抱えながら、まじまじと見る。
「…いやぁ…確かにぃ…かわいいけどさぁ…
これってただのクマのぬいぐるみじゃん。」
大洋は、昴との会話を思い出す。
「昴せんせーって、なんでそんなに強いのー?
やっぱ生まれつき?」
「…んーそうとも言いきれないかな。」
「俺にとっちゃ、昴先生が先生だけどさー、昴先生にも先生がいたの?いたとしたらその人めっちゃめちゃすげーんだろーなぁー!」
「…うん…もちろんいたよ。
世界一可愛くて、ものすごぉぉく強くて、死ぬほど憎たらしい、僕の師匠がね……」
「………えぇ…?……マジ?!なにそれ…
ずりーよ!!そんなに美人で強くてツンデレなんて最強すぎじゃん!!会わせてよ!!ねぇお願いだよ昴先生っ!!」
「…美人でツンデレなんて言ってないけど…ふっ。
まっいっか。OKOK。どうせなら訓練付けてもらえば?」
「えっウソ!?いいのぉ?!
うっひょぉ〜!すっげー楽しみができたっ!!
あー…でもどーしよ!なんか俺緊張してきたわぁ…」
「とにかく、それが僕の師匠。
ちなみに名前はクマ。」
「え、なにそ」
ドガッ!!
「っでぇぇぇ!」
突然のクマのぬいぐるみパンチを食らう大洋。
「その傀儡は一定の魔力を流し続けないと、そうやって攻撃してくるよ。」
「ええ?!それ先に言ってっ!」
「ここにあるいろんな映画やドラマ、好きなのいくらでも観ていい。ただし!そのクマに一定の魔力を流し込み続けながらね。」
クマは、今では意思がないにしても、普通の傀儡としては完成された代物だ。
そしてこのような訓練にも使える高度な技術が施されている。
さすがは里桜の作ったものであるといったところだ。
大洋はかなり残念そうな顔をしてソファーに腰掛けた。
「はー…なるほどー…
昴先生も、昔こうしてこの人形と映画見て、訓練してたってわけね。」
だからこのクマを師匠と言っているのか、と結論づける。
仕方なく、アクション映画のDVDを選んだのだが、初っ端からクマにボコボコにされ続けた。
「くっっそ!なぁコレムズすぎだって!
幸愛ぁ!これどうすりゃいい?!」
「なんの努力も無しに変われると思うなよ、子供じゃないんだから。もう怪我も完治して万全の状態だろうが。」
幸愛はいつも通りの至極冷静な態度で冷たく言い放った。
「ちっ、少しくらいアドバイスくれてもいーだろ!」
大洋はぶーぶー文句を言いつつも、
やはり自分の大切な人を救えなかった記憶をバネにしている。
「じゃっ、その調子で頑張ってよっ。
僕と幸愛は用事があるから」
「うぅ〜…でもこれでほんとに強くなれんの?」
「なれる。言っとくけど、僕なんてそのクマに100倍もしごかれ続けてたんだから。」
「えぇっ?!そうなの?
俺多分これ以上は耐えられん…
やっぱ最強は違ぇなぁ……」
大洋は、クマを抱き抱えたまま、しぶしぶまたDVDを物色し始めた。
「じゃ、行こうか幸愛」
「はい」
昴は幸愛を連れて部屋を出ていった。




