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優しさに甘やかされていた。
ああすれば良かった
ああ言えば良かった
何度繰り返しても
時間は戻らない
確かに世界は暗闇で
ろくでもないことばっかだよ
けど、
それでも…
あの瞬間、
俺たちは
確かにあそこにいた
あの時間が俺は
大好きだった。
「なぁ、翔。
俺さ、お前に出会えてホントによかったよ」
「…ふ……なんだよ急に…」
「いつも俺のそばに翔がいてくれて…
ホントに…嬉しかったって言いてぇんだよ」
「は……君がまともなことを言っていると…
調子が狂うよ…」
「ひでぇな…本音だよ。」
翔の髪があのころよりかなり伸びている。
そうやって伸ばしてたのも
ハーフアップにしてたのも
どうせあれだろ。
あの頃そう、言われたからだろ。
里桜が何気なく言った一言でも
それは全部、
そうやってお前にとっての呪いになってんだよな
「あぁ、そうだこれ…」
そう言って翔が寄越したのは、エルサルバドルの鳥のキーホルダーだった。
「それ…返しといてくれないか、楓さんに…」
昴はその美しく儚げな鳥を見つめてから、ポケットにしまった。
「……お別れだ。翔。」
ここで、俺が翔を殺さなきゃいけない。
他の誰にも殺させない。
こいつは俺が殺る。
覚悟はとうにできてる…
あの日から…
ずっと…
心に決めてきたこと……
「あぁ…最期、君で終わるとは思わなかったが…」
翔は視線を落としたまま自嘲気味に言った。
「…私はきっと…心から笑うことのできる世界を、自分のために作りたかっただけなのかもしれないな…」
昴はうっすら笑った。
「…嘘をつくなよ。
やっぱりお前って、あの頃と変わらず
嘘も冗談も、センスねーな…」
どう考えても、あれは心の底から笑ってただろ。
いっぱい。
とくに、あいつといる時なんかは…。
お前が離反したのも…
お前自身のためじゃない。
あいつと、俺と、魔術師全員のためだ。




