10
その夏、翔の一派は都内を中心に奇襲した。
たくさんの人間が殺され、ほとんどの魔術師が出動した。
しかしその際に、翔は幸愛と対峙し、幸愛の父親のような膨大なパワーに致命傷を負わされた。
「……やぁ、昴…っ…
今になって君に会うとはね……」
「お前の一派は取り逃しちゃったよ。
初めからそのつもりだったんだろ」
「ふ…まぁ私は優しいからね…」
「……その優しさを…別のところには向けられなかったのか…」
「くくっ……」
……いや、違うよな翔……
その優しさ故に、優しすぎて、だから……
お前は行っちまったんだろうな……
「…翔……なぁ……」
なぁ…
こんなことってあるかよ…
残酷すぎるだろ…
俺たちの青春って…
「翔にさ…言いたいことも謝りたいことも、すげーたくさんあったんだ。…なのにさ……」
不思議だ。
あれだけあったはずなのに
なのにさ…
「いざこうして2人きりになると…それがなんだったのか、なーんも思い出せねぇ。」
翔は目を虚ろにして笑っている。
おびただしい血が体中から流れ、
想像を絶するほどの痛みと苦しみであろうことは分かるのに、それでも薄ら笑っている。
「君が私に謝る内容なんてないだろ…」
「あったんだ、いっぱい。」
翔の耳を見て目を細める。
クリスタルのピアスだけは、あのころと変わらずずっとそこにあったように見える。
眩しいほどに輝くそれは、唯一、なんの穢れもない純潔なものに見えた。
「翔…お前のこと…ずっと思い出さないようにしてた…でも…無理だったよ。女々しくて気持ち悪ぃよな、俺。」
そう言って自嘲気味に笑った。
最後くらい素直になりたいと思った。




