おやすみ僕の…
数年後…
神塚昴は魔術高校の教師として就任していた。
高校時代、自分が唯一本気を出して戦い、最終的には殺した男、麻宮政春の息子、麻宮幸愛、
彼も今年からこの高校に入学させた。
魔術界で、まるでセリにかけられているかのように取り合いになるのが目に見えていたからだ。
それならば、昴は今のうちから幸愛を匿い、育て上げようと思ったのだ。
魔術界はあれから新たな組織が形成され、また昴がウンザリするような世界になっていた。
「はぁ〜あ、今日もめんどかったなぁ〜
相変わらず変な奴多いよなぁ。ねぇ?くまポン。」
昴は自分の家のソファーの上に置いてあるテディベアの頭を撫でた。
「僕はさぁ、若い子たちだけでもせめて、誰にも強制されない青春を送れる魔術界にしたいんだよ。
ねぇ、くま…お前は今の僕を見てなんて言うかな…」
テディベアはなにも答えない。
表情ひとつ変えず、ただそこに佇んでいる。
「……お〜い。
お前と喧嘩できないとか張り合いないよ〜?」
なんか言ってくれよ。
なんでもいーからさ…。
あの頃みたいに。
ガンガン僕に文句言え。
ガンガン僕に助言しろ。
ガンガン僕を指導しろ。
お前はたった1人の
僕の"師"だろ。
「ねぇ、僕、なんも間違ってないよね?」
そう言いながら、クマと共にボーッと前を見つめる。
ついていない、黒い大きなテレビ画面。
ソファーに座っているクマと自分が映っている。
ちゅーーーー
いちごミルクのストローに口をつける。
「っはー。うま。」
"青春を取り上げられることの無い現実を、君が作っていけばいいんじゃないか。学校で教鞭を取って、強く聡い若者を育て上げ、夢を現実にするんだ。"
「…僕ってさー、
良い先生になれてると思うー?
クマせんせー?」
"自分の力で変えてみろよ、昴。"
「あいつは今……
何してんだろな…」
真っ暗なテレビ画面に映る自分とクマの姿を見つめながらまたいちごミルクを吸う。
生徒たちによく、"独りに慣れるな"
なんて言っている。
いずれ独りになることを前提に戦ってほしくない。
独りでなんでもできる人間なんていないし、満足できる人間なんていないからだ。
自分の経験から言ってるつもりでいながら、
でも結局……
僕は独りじゃなかった。
ずーーっとお前だけは
僕のそばにいてくれた。
だから別に寂しくなんてなくて、
だから僕はここまでやってこれた。
だから……
なぁ?くま野郎。
"俺"のこと、見ててくれてる?




