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"卒業式の日に桜の木の下で、それ歌ってよ"


"え、みんなの前では恥ずかしいよ"


"いや俺の前でだけでいいよ"


"はぁ?"




ケラケラと笑っていた彼女のことが、鮮明に蘇る。


それからくま野郎のことも…



「…歌…聴きたかったな……」







これは…


拷問だ。呪いだ。



そう思った。






「はー…なーんか…卒業っつー実感がねーなー…」


「そうだね…」


瞳が桜の絨毯を靴で掘りながら言った。


「どーせ俺らって卒業しても、やること変わんねーだろ?だからかなー、なんか、テンション上がるどころか下がるわ〜。しかも、みんな離れ離れ〜とか、忘れないよぉ〜とか、そーゆーフツーの学園ドラマみたいな青春ないからなー。第2ボタン下さいとか言われたかったわ〜」


「ねぇ、神塚。」


ペラペラと喋りっぱなしの昴に、瞳は声をかける。

木に寄りかかって上を見上げていた昴は、サングラス越しにこちらを見た。

そのレンズには、ひらひらと動いているものがたくさん映っている。



「写メ、撮る?…桜綺麗だし。

写真好きっしょ、あんた。」



昴は、少し沈黙し、

木に身を預けたままずるりと座った。


そして静かな声を出す。



「あー…いいよ別に。」



「…いーのー?

私が付き合ってやることなんてそうないよ?」



「うん。残すことばっかしてるとさ、"今" が見えなくなるだろ。今に無くて過去にあったものを探して、見て、感じて、で…幻覚を作りあげようとする…」



楽しかった日々を思い出して

脆くなるんだ。

人間は弱いから。

あの頃に戻りたいとか感じてね。



「足止めになるようなものは避けたいんだ…

進みたいんだ、前へ…」



昴は桜の絨毯をすくった。


その手首には、ミサンガがしてある。

瞳は無意識に自分のミサンガを触った。



昴の手のひらからハラハラと花弁が落ち、

また絨毯に加わった。




「 "僕" はもう、道を決めたんだ。

そこを通る絨毯も、自分で敷いていく。

ルビーみたいに真っ赤な絨毯をね…


僕には………夢があるんだ。」






そこに落ちていく花弁はまるで雨のように


いつまでも降り注いでいた。



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