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4

その隙に、木星と海王星を放った。

これを試してみたかったのだ。

この組み合わせがどうなるのかを知りたくても、なかなか試せるときがなかった。

できればこのくらい強いクラスの魔物に、どのくらいの効き目があるのかを把握しておきたかった。


「っわ!なるほど…」


それは海の中で木が生い茂るように、瞬く間に珊瑚のような姿となって魔物に絡みついた。


すかさず目一杯の呪力を注ぎ込んだトドメを刺そうと構えた瞬間、グラリと視界が揺れた。

足元が魔物によって歪まされたのだとわかった瞬間、何かに手を引かれて引き上げられた。


それが翔だとわかった瞬間には、自分は翔の魔物の背の上にいて、翔の声が聞こえた。


「失せろ…」


こちらまで怯むような奥から絞り出した低い声。

その瞬間、対峙していた準A級魔物は彼によって消されていた。


全てが一瞬のことすぎて唖然としていると、翔も飛び乗ってきた。


「私の勝ちだね、里桜」


目を見開いたまま視線を移すと、いつも通りの優しい表情があり、正気に戻る。


「はー…あとちょっとだったのに…」


「足元の状況把握を怠りすぎだね。正直私もかなり焦った。あのまま引きづりこまれていたらと思うと…」


と言いながら翔は顔を歪めた。


「…ごめん。気をつける。」


「でも凄いよ。準A級相手にここまでやれたんだ。里桜は多分もうA級術師に昇格するよ」


その言葉に複雑な表情を浮かべる。

援護がなければここまでできなかったし、試したいことも最後まで試せなかった。

結局足でまといだった感じがして悔しい。


「これを使うほどじゃなくて良かった」


そう言って翔は耳のルビーを触った。


「これは使うつもりないもん!」


「君の命が本気で危ないと思った時は使えよ。

そう言ったはずだ。」


「…だとしても…わかんない。」


翔は眉をひそめてからため息を吐き、突然里桜の首筋に噛み付いた。


「っ!!…ちょとっ…?」


ジュッと吸いつかれ、離された時には意味深な笑みを浮かべている翔が目と鼻の先にいて目を見開いたまま唖然とする。


「言っただろ、罰ゲームだよ」


「…な……」


何をされたのかよく分からなかった。

ただ、首に噛み付かれたとしか。



「あ、そうだ、忘れてた」


突然そう言って翔は先程倒した魔物を閉じ込めた液体の瓶にゆっくりと口をつけた。

彼はいつもこうして降伏した魔物を取り込み、それを引き出して自分の術とするのだ。


「うっ…ごほっ」


「だっ、大丈夫?!」


これをしている所をこんなに間近で見たのは初めてだった里桜は、あまりに辛そうな翔に胸が痛くなった。


「ね、ねぇ?…それ…どんな味?」


「…うーん…言葉では言い表せないな。何百回と繰り返してきたはずなのに、未だになれないんだ。」



里桜は顔を歪め、苦笑い気味の翔を見つめた。

そんな吐き気を催すようなこんな儀式を今まで幾度となく繰り返してきたのだと思うと、いてもたってもいられなくなって翔の手からそれをひったくった。


「っ!おい、里桜?…っな!?」


翔が止める間もなく里桜は一気にそれを飲み干した。


「おい!何してる!!」


翔は顔面蒼白になっている。

こんな表情の彼を見るのは初めてだが、里桜は薄ら笑った。


「はは…確かにこれは酷い味だ」


「お…い…なんでこんなことする…吐き出せよ…」


信じられないといった顔をし、少し声が震えている翔。


「嫌だよ。だって、好きな人の普段感じている感覚は、できる限り多く共有したいじゃん。翔が感じていることは私も感じたい…」


言い終わった瞬間に翔の腕に引き込まれる。

ギュッと抱き締められ、「バカ…」と掠れた呟きが聞こえた。



「離さないからな…」


「ふふ…私だって離さない…」



2体の準A級魔物を祓ったことにより、他の魔物は全て消えていて、2人のいる屋上から広がるように徐々に明るさが取り戻されていった。

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