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「…昴が謝ることじゃないよ……」


「・・・」


里桜も背中に手を回した。

翔と全然違うと感じた。

翔よりも少し細身で、筋張っている感じ。

腰周りも翔よりも細くて薄い。

でも硬くて、暖かくて、逞しい感じがした。


思えば、翔以外の男と抱擁したことなんてなかったのだ。



「謝るのは…私だよ……

いつまでもうじうじしててごめん…

強くなる…から……」


いつまでも、引きづらないように…

いつまでも弱いままの自分ではダメだ。

昴なんて、私よりも付き合いが長かったんだから、親友だったんだから、すごく辛いはずなのに…

私ばかり甘えていてはダメだ。



「昴は…すごく強いね……

力だけじゃない…心まで強い…」



昴の服を、自分の涙が濡らしていることに気がつき、離れようと力を緩めるが、昴の力は逆に強まった。




「…強くても意味ないんだよ」



「・・・え?」



「1番救いたい奴を救えないなら力なんて意味ない」



何も言わずに黙っていると、身体が離れた。

そしてまた頬に指が這った。



「ごめんな…涙を拭うのは…

俺の役目じゃない…のに。」


ぼんやりとした少し冷たい表情の昴。

里桜は首を振った。



「…そんなこと…謝ることじゃないっ

だって……」




ギュッと目を瞑って昴の胸元を握る。

その手に昴の手が重なった。



そのとき


額に何かが触れるのがわかった。


それはとても柔らかかった。


そして、そのまま頬に、また同じ感触がした。


柔らかくて、暖かくて、でも…


目を開けた時、そこにある眼はどこか冷たく淋しげだった。



見たこともないその表情に、目を見開いた。


そして、たまらず抱きしめる。



「…… 里桜…?」


「昴…ごめん…」



昴は驚いたように目を見開いていたが、瞼を閉じ、ゆっくりとその身体に腕を回した。


こないだのあの雑踏の中でしたのと同じように、頭をグッと引き寄せる。



たちまちまた、あの時みたいな嗚咽が聞こえてきた。



「…ごめん…やっぱり私、辛くて…

辛くて辛くて、しょうがないの…っ…

死にたい…くらいに……」



「…んな事言うな」



「……もうっ…おかしくなりそうな…くらいに…

息が…っ、苦しい…っ…

生きてたくないっ…の…」



「………」



昴は目を瞑ったまま更に強く抱き締めた。



「私やっぱ…弱すぎる…っ、よね…

捨てられたこと…受け止めきれなくてっ…

いつまでもっ…ひ、引きづっ…てて…っ」



一生懸命、吐露する弱音に、ジッと耳を澄ませる。



「おかしい…っ、よねっ…

こっ、こんなことで…すごくっ…

消えちゃいたいくらいっ…にっ…

絶望的にっ…なってるなん…てっ……」



「おかしくない……

里桜がどれだけ、

あいつのこと好きだったのか…分かってる。」



天馬翔は彼女の全てだった。

彼女の生命そのものだった。

彼女は天馬翔という男のために存在しているというくらいだった。


そんな男に、半ば捨てられるような形で別れて…


どれだけ辛いか…


死にたくなる気持ち

消えたくなる気持ち

生きてたくない気持ち


そうなることは当然だろう。


そのくらい、里桜は天馬翔という一人の男を愛していた。






"怖いんだ…こんなにこんなに…

どこまでも幸せな日常がいつか、

…壊れちゃうんじゃないかって……"



初めて彼女の涙を見た時、こう言っていた。

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