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翔が短くため息を吐いたのが分かった。
そして、耳元に小さく届いた声。
「…好きだ」
目からまた、とめどなく涙が溢れた。
「な…んで……」
なんでそんなことを今言うの…
ズルいよ…
"これを言うのは最初で最後だからな"
そう最初に言ったっきり、
決して口には出さなかった言葉。
それは私にとって、
呪いになる。
「……いつか…君を迎えに行っても…
いいかな…?」
なにそれ…
どういうことなの?
何も言えなくなっている私の耳に、
翔はまた優しく囁いた。
「言い方を間違えたな…
君をさらいに行くよ…」
「え……」
その腕はギュッと私を抱きしめ、またすぐに脱力し、押し剥がそうとしてきた。
それでも私は離れまいとしがみつく。
片時も離れていたくない。
迎えとか意味ない。
ずっと一緒にいたい。
少しも離れたくない。
翔が深く深呼吸し、長い息が私の髪を揺らしたのが分かった。
「… 里桜!!離れろ!!」
後ろで突然 昴の大声が聞こえて、反射的に腕を緩めた瞬間、スっと翔の体が離れた。
翔は手に魔力を溜めていた。
魔術で私を気絶させようとしたのか…
それとも…
いずれにせよ、ショックでまた涙が流れた。
「誰にそれを向けてんだ翔!!!」
「…君こそ誰に向けているんだい昴。」
恐る恐る振り返ると、昴が翔に術を構えていた。




