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翔はいつもの笑顔を向けてきた。
「君に譲るよ、昴。」
その言葉に、目を見張った。
「なん…だと…
翔……お前の女だろ!」
「愛を必要とするのは、完全な人間じゃない」
「あぁ?」
「誰かが誰かを愛する時、相手の弱さも不完全さもちゃんと知り尽くしているから愛するんだ。
それだからこそ一層愛する。愛を必要とする。
つまり愛を必要とするのは完全な人間じゃない。
不完全な人間こそ愛を必要とするんだ。」
「どういう意味だ…もう愛してないってことか?」
「やるべきこと、優先すべきことがあるということだ。
果たさなくちゃならない責務がある。
いろんなことが不完全にしかできないのだと認めるつもりは無いからね…
でも別に…その解釈でもいいよ。
君や里桜を見ていると、人間の不完全さがよく分かる」
昴は反射的に手を構えた。
ここでこいつを…親友を…
「殺したければ殺せ。私だって君の成し遂げることをとやかく言う権利はない。」
そう言って翔は踵を返して歩いていく。
「それに私の家族は他にいる」
「……待て…翔…」
「じゃあな昴。里桜を頼むよ」
は……いま、なんつった?
その言葉はあの時の魔物の幻聴と
全く一緒じゃねぇか…
嘘だろ
あれは魔物の戯言だろ
幻聴だろ
俺の潜在意識の中…の…
俺の…潜在意識?
手が震える…
待てよ…翔…
俺…は…
その時、スっと横から昴の手を下ろし、
現れたのは・・・
里桜だった。
「っ… 里桜!」
なぜだ?いつのまに?!
クマ野郎か?
里桜はそのまま前に出て、
追うようにして歩き
そしてその背に叫んだ。
「翔!!!!!」




