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人の行き交う街の雑踏の中、翔の前に立ちはだかる昴。
翔はこちらに気づいて立ち止まった。
「どういうことなんだ翔!!!」
「クマ助や瞳から聞いた通りだよ」
「親も棗も殺してまでやりてぇことが正しいわけねぇだろ!」
「凡人にとってはね。だがそんなことだから、誰も何も変えられなかったんじゃないか。」
「あぁ?!」
翔は不気味に笑っている。
「やっぱり、君はなんだかんだ言っておきながら、甘いんだな」
「なんだと…?」
「めんどくさいだの青春が欲しいだの、魔術師をやめたいだの、全部終わらせたいだの、子供のように散々喚いておきながら結局何もしない」
昴の鼓動が跳ねる。
呼吸がだいぶ乱れてきていた。
「…あぁ…そうだな。そうだよ。
その度にお前が俺をなだめてたじゃねぇかよ」
翔は冷たい表情になり、目を細めた。
「君にならできるはずのことを、君がやらないから私がやるんだよ。」
昴は目を見開いた。
あの時、クマが言っていたことを思い出す。
"お前だったらどうにかできんじゃねぇの"
"…は?それどーゆー意味ー?"
"お前だったら、こーゆー世界を消しちまうことくらいできんじゃねーのかってことだよ"
"な……"
"人類抹消っつーのは朝飯前だろーし、地球の地形を変えることすらも可能なはずだ。つまりは本気を出せばなんでもできる…はず。だろ。お前はまだ本気を出したことがない"
お前にならできんだろ。お前になら、理想の世界を一瞬で作ることくらい案外容易いかもしれねーぞ。"
「生き方は自分で決められるんだ。」
「………」
「できることをしないでただ御託を並べ立て、才能を持て余してるだけの君みたいな人間に、私を止める権利はないよ」
「…てめぇ……」
「この世に、変えられないことなんかない」
呼吸を乱しながら睨みつけてくる昴に、翔は背を向けようとした。
「おい待て。
里桜を…放っとくつもりか」
「……」
翔はぼんやりとした瞳で真顔のまま昴を見つめている。
昴はサングラスをしていない。
「…君のその碧眼には、
この世界がどう映っているんだい?」
「……は?」
「君の眼はやはり…ただのイミテーションか?」
「…なにを…言ってんだ?」
風が吹き抜け、翔のハーフアップの髪が揺れた。
「こんなにお前のことを
わけわかんねぇと思ったことはねぇよ…」
「…いいさ、それで。」
「里桜が泣いてんだ。
今すぐ飛んでけよ。
涙拭くのは自分の役目だって言ってただろ。」
"聞け、翔。
…俺はその涙を拭いてやれなかった。
なぜだか分かるよな?
それはお前の役目だからだ"
"分かっているよ…どんな涙でも
見てみたいな。里桜が泣いているところ"
"なら約束してくれ。その涙は必ずお前が拭くと"
"わかった。約束するよ"
そうお前は言った。
約束したはずだ、俺と。




