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「翔、ピアスしてくれたんだね。」


目的地までの道中、補助監督の森さんという男性職員の方の車で移動していた。


車の中で、翔はずっと手を握ってくれている。

けれど、さっきの五条とのピリピリとした雰囲気は気になっていた。


「なかなか似合ってるだろ?」


しかし車に乗り込んで2人きりになった途端、いつもの優しい彼に戻っていて安心する。


「うん、かなり似合ってるよ」


持っていてとは言ったけど、まさかしてくれるとは思わなくてかなり嬉しかった。

手を繋いだまま互いに笑みを突き合わせる。


さっきから森さんがバックミラーでちょいちょいこちらを確認しているのがわかる。

イチャイチャカップルを乗せてしまったことに少々ウンザリしているのだろう。


「あのー、お2人とも?僕の話聞いてました?」


「聞いてましたよ森さん。今は誰も寄り付かなくなった△△病院の跡地でしょう?で、魔物は恐らく準B級より上。」


すらすらと言う翔の言葉に森は頷いた。


「はい、しかしA級の天馬さんとB級の弥生さんでもくれぐれも気をつけてくださいね。一体二体じゃないようですからね」


多分、広い病院だ。

魔物はうじゃうじゃいそうな予感がする。


翔の足でまといにだけはならないようにしようと考えていたら、知らぬ間に手に力が入っていたようだ。

ギュッと握り返されるのがわかり見上げると、大丈夫と言うように優しく笑う翔がこちらを見ていて肩の力が自然と抜けた。


着いたところは想像以上に薄気味悪い建物だった。

まだ昼間だというのにこの空間だけ深夜のように黒いオーラに囲まれている。

そして着いた瞬間からやはりたどたどしい呪力を感じる。


「入口はあちらです。では境界壁を下ろしますね」


そう言って森さんは早々に境界壁を下ろした。


「何かあったら下手に動かず連絡を。それが叶わない場合は必ず何かしらの合図を放ってください。…ご武運を。」



「じゃあ行こうか里桜。とっとと片付けよう」


「うん。なんか…思ってたよりも多くいそうだね…手分けする?」


「その必要はない。何があっても私から離れないでくれ」


そう言って手を引く翔の後を追いながらもう片方の手で構えるように耳に触れる。


建物に入り奥に進むにつれ、なんとなく分かってきた。

ここ1階にはなにもいない。

恐らく始まるのは2階から上だろうと。


こんなふうに手を繋いでいる状況だけど、もちろん遊園地のお化け屋敷に来たみたいな感覚には到底なれない。

神妙な面持ちで五感を研ぎ澄ませた。

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