15
3人で来ようと約束していたカフェにようやく来ることができた。
クマはベリーがふんだんに乗っているパンケーキを選び、里桜は季節の果物の乗ったパンケーキを選んだ。
翔は、絶対こんなに食べられないから里桜が好きなの選んでと言うので、マカダミアナッツのパンケーキを選んだ。
カロリーが高そうだし、どうせなら全員違うものが良かったからだ。
そうして到着したパンケーキはやっぱりどれもホイップクリームが山盛りで見るからに五条が好きそうな、なんとも写真映えするボリューミーなもの。
里桜とクマは目を輝かせて食いついている。
翔は正直最近本当に食欲がない上に、先程のこともあって何かを食べたい気分には到底なれず、目の前の2人を見つめているだけで満足だった。
"私たちは家族なんだから"
里桜の言葉を思い出す。
美味しそうにスイーツを頬張るというなんとも可愛らしいその姿だけで、もうお腹がいっぱいだ。
「ねぇ、翔?ホントに最近やつれたみたいだし、カロリーは摂取しないとダメだよ?」
ただニコニコと頬杖をついて見つめて来るだけの翔を見てそう言う。
「うん。」
「いや、うんじゃなくって…もう……」
ニッコリ笑顔のままでいる翔の前に、フォークに刺したパンケーキを差し出す。
「ほら翔、あ〜ん、だよ」
心底かわいいなと思いながら、
フッと笑って仕方なく口を開けると、甘ったるいクリームと共にそれが押し込まれた。
「………ちょっとこれ…甘すぎないか?」
こういったものはクリスマス以来だからか、異様に甘く感じて眉をひそめてしまった。
「でも美味しくない?」
「………ふふっ…」
いかにも女子が喜びそうな味と見た目のこのスイーツよりも、目の前にいる笑顔の彼女のほうが美味しそうなどと言いたくなってしまって笑いしか込み上げてこなかった。
里桜はあまりにボリューミーなパンケーキに、早くもお腹いっぱいになってしまい、何度か翔の口の中へも押し込んだが、お互い限界になってしまい、結局ほとんどクマが食べてくれた。
「ふー…私ってこんなに食べれなかったっけー?」
「久々に胃がもたれそうなんだが…」
「お前らは少食だな」
とりあえず、ホットティーを飲みながら一息ついていると、隣の席に、若めの夫婦と、可愛らしい2人の子供が席に着いた。
まだまだ小さくて、母親と父親それぞれに抱かれて座っている。
里桜はあまりの可愛さに目が離せなくなった。
ほぼ赤ちゃんのような子供をこんなに間近で見れることはそうない。
「可愛いなぁ〜…」
ついそう呟くと、母親が気づいたようで笑顔を向けてきた。
「双子なんですよ。」
「わぁ…そうなんですか!確かに…瓜二つだぁ…」
よく見ると、確かに全く同じ顔をしていて、そして女の子のようだ。
「あー…ホントに可愛いね」
「うん。」
翔も笑顔で頷いた。
両親は幸せそうに笑っている。
「お名前は、なんて言うんですか?」
里桜の質問に、母親が子供の頭を撫でながら言った。
「この子が朝陽で、そっちの子が夕陽です。」
「へぇ〜…朝陽ちゃんと夕陽ちゃんかぁ…
いいお名前ですね…」
なにか玩具のようなものを手に持って振っている可愛らしいその子たちを見て、里桜は素直に羨ましくなってしまった。
自分も女だし、いつか我が子を抱けたら…
そんな未来があったら…
でも、私たちは、この人たちを守るために存在しているようなもの。
今隣で笑っているこの両親や、愛されているその子供たち
この笑顔を守るために私たちは命懸けで頑張らなくちゃならないんだ。
そうだよね…
そう思って翔に視線を移すと、
彼はどこか冷たい表情で目を細めて子供を見つめていた。




