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5

もちろん高専に帰ってから鬼頭のゲンコツは昴に落とされた。

けれど大量のお土産によって気を取り直してくれたよう。


「次の任務は2人1組で行ってもらう。

組み合わせは、昴と瞳、翔と里桜

いいな?」


「えぇー?!もう?!え、ちょっとちょっと先生俺らさぁ長旅で疲れてんだよねぇ、もっといたわっ」


「おい昴。その発言は不謹慎すぎるぞ」


翔によって一喝された。

魔術は人を助けるためにある。

1人でも多く、より早く救いたいという彼の考え方は至極真っ当な魔術師の鏡だ。


昴は何も言えなくなった代わりに不貞腐れたように大きくため息を吐いた。



「なんだ、昴?組み合わせに不満でもあるのか?」


「ああ。大アリだね」


「なに?」


鬼頭はまさか即答されるとは思っていなかったのか、顔を顰めた。


「あんま組んだことがない里桜がいーなー。」


全員が目を見開く。

今まで2度だけ組んだことはあるが、魔術のバランスと相性の関係があるので、鬼頭の指示するペアには皆いつも何も言わずに従ってきた。

相性が悪い訳では無いのだが、互いに思うように動けない節があり、あまり昴と里桜のペアにはならなかったのだ。


毎回あまりやる気のない昴から、今回そんな希望が出てくるとは思わなかった。


「えー?ダメなのー?」


「ふーむ、まぁ決定事項というわけではないが…。

翔、里桜、どうする?」


「ダメだ。譲る気は無い。」


そう即答したのは翔。

辛辣な顔を浮かべて強くそう言い放った。


なんとなくピリピリした雰囲気になり、昴の鋭い目付きが翔に突き刺さる。


「ま、今回は諦めろ、昴。

俺が先に言ってしまったことだ。今更取り消せないしな。だがお前のその前向きな姿勢は評価する。次回はそれを尊重しよう」


「チッ」

「次回?」


昴と翔の小さな呟きが重なった。



「昼食後に任務開始だ。いいな?」


「ーー…」



4人の返事のようで返事じゃないような声で締め括られた。





食堂で瞳と里桜がお喋りをしながら昼食を摂っているのを横目で見てから翔は目の前の昴に視線を移す。


「あーもー無理ー。新幹線で菓子食いすぎたわー。

翔、これ食べていいよ」


そう言ってグイと押し付けられたト里桜にはほぼ全ての食事が残っている。

翔は眉を顰めてそれを見る。


「この場合、食べていいよではなく、食べてくださいなのでは?子供でもそれくらいのことは」


「また説教?俺他人にとやかく口出しされんの嫌いって言ったばっかなのに〜」


何食わぬ顔で被せてきたその言葉は、翔のこめかみに青筋を立てた。


「なかなか私に喧嘩を売るのが上手くなってきたようだね、昴くん?」


「んんー?」


好戦的な目で口角を上げ始める昴に、翔はフッと笑った。



「わざわざそんな子供じみたことを主張するために昨夜部屋に押しかけてきた訳では無いんだろう?」


「・・・」


昴の眉がピクリと動いたのを翔は見逃さなかった。

至って冷静な態度で続ける。


「私と里桜の邪魔をしに来たんだよな、昨夜は。」


ググっと翔が水を飲み干し、暫しの沈黙が流れたあと、昴がニコニコと笑いながら言った。


「んー?珍しく被害妄想ってやつかな翔くんー?」


「私には昴の考えていることは全部分かるのさ」



その言葉に、今朝里桜と新幹線の中でした会話が脳裏に反芻された。



"俺にも翔の考えていることがよく分からねぇときがある。ていうか、いつもそう。まぁ結局は自分以外なんて他人なんだから分かりっこないんだけど。"


"そう、だね。全部知りたくても、それは叶わないよね。"




「狸寝入りが上手なんだね、翔くん?…初めて知ったよ」


「そっちだって…人の恋人にちょっかい出すとは、そこまで度胸があるなんて初めて知ったよ、昴くん?」


互いのこんなに不気味な笑みを突き合わせるのは初めてだ。

なんとも言えない空気が流れる。



「…手を握っただけで?」


「じゃあなんだ、セクハラか?君が言うところの"一歩間違えれば犯罪"というやつか?」



暫く沈黙が流れ、先に口を開いたのは昴だった。



「それで?じゃあどうする?」



数秒間見つめあった後、翔は僅かに口角を上げ、静かに言った。



「…殺し合おうか」



それでも眉一つ動かさない昴を見やりながらポケットから何かを取り出す翔。

稲妻型のそれを耳に当て、ブチッと音が鳴った。



大きいピアスの横に新たに装着された稲妻型のピアスはいつも里桜がしていたものだ。


それが今、翔の耳でキラリと光りだした。



「ふぅん。いいね、結構似合ってるじゃん」


「だろ?」




その時、瞳と里桜の急かすような声が耳に入ってきた。


「もーそろそろ行くよー!あっやべ、一服すんの忘れてた、私の煙草どこ」

「早くしないと今度は頭突き食らうよ〜」





何事も無かったかのように目を逸らして2人同時に立ち上がる。



「ねぇ翔、里桜には傷1つ付けない!って映画みたいなセリフ聞かせてよ」


面白そうにコソコソと耳打ちする昴に、翔は真顔で言い返す。


「自分を奮い立たせるためにわざわざそんなことを言う弱者のセリフは私は吐かない」



「あっそ。じゃ、次回俺の時には使わせてもらうわ」


肩で笑いながら前を行く昴の背中を冷淡な顔で見つめながら翔も歩みを進めた。

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