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「つまりな、結局、発生したどっかの魔物をどっかでひたすら退治しまくってたって、根本的には何も変わらんよってことや。」
「それは…わかりますが、じゃあどうすれば…」
「天馬ならなんとなく分かるんやない?」
翔の瞳孔がひくっと開いた。
そんな翔に、楓はうっすら笑う。
「根本的な部分の根絶、まぁつまりは、」
「人間の根絶…?」
つい言葉に出してしまった翔は、ハッとして恐る恐る楓に視線を移した。
楓は目を丸くして翔を凝視している。
「や…天馬おまっ!」
「いや、違うんです!ただ仮の話を、」
「むっちゃ冴えとるやんやっぱ!」
「え」
なるほどな…と言いながら楓は顎に手を当てた。
「それもえぇなぁ。むしろ1番手っ取り早いかもしれんし…」
「え…や…あれ……。楓さんが言おうとしてたことは違ったんですか?」
「おー、うちは魔物を発生させない人体構造について研究しとるんや。ムズいと思うやろ?でもなるべく多くの一般人間の人体の情報さえ集められれば、発生の糸口を見つけられると思うんや。当然、数百数千人じゃ足りんかもしれんし、まぁそんなん魔術界が許さんと思うから、まだ動けてないんがもどかしいんやけど」
そう早口で言ってから、バイクの鍵を取りだした。
「そや、天馬にこれやるわ」
ホラッと言って、鍵から外したキーホルダーを取り出した。
そこには赤い目をした、驚くほど美しい色合いの鳥が描かれていた。
「それな、ホルマンがくれた、彼が組織してる魔術界の象徴なんよ。なかなか渋いやろ」
翔はそれを手のひらに乗せ、その美しさに目を奪われた。
尾が長く、青と橙と緑のグラデーションのような神秘的な色合いの羽毛に、黒曜石のような嘴。
「エルサルバドルの国鳥、アオマユハチクイモドキ。
これにまつわる伝説が残されてる。」
「伝説…?」
「エルサルバドルはかつて、人口増加と貧困により農民が森林を破壊した途上国として有名だったんや。しかしある日、どこかから、1羽のアオマユハチクイモドキが飛んできた。その世にも美しい鳥が人々の頭上を飛んだ時、人々はその1羽の鳥だけのために森林を復興しようと一丸となったんや。」
そうしてエルサルバドルは現在の美しい国へと発展し、アオマユハチクイモドキは国の象徴となったのだと言ったが、翔は、それはまるで人々が1羽の鳥に洗脳されたかのようだと思った。
「"変化を運ぶ鳥" と言われてる。
うちが言いたいんは、きっかけさえ起きれば、それがたとえどんなことでも、変化に繋がるということや。」
そのとき……
「おいこらぁ!伊集院ーーーーっっ!!」
「げっ!マジかいっ」
向こうの方からものすごい剣幕で向かってくる鬼頭がいる。
「ってことだから!天馬!
元気出しぃ!うちはもう行くで!」
「えっ、行くってまたどちらへ?」
「そらぁもちろん!きっかけ探しときっかけ作りへよ!」
すぐさまバイクに跨ると、
「神塚とクマちゃんによろしくなーっ!」
と手を振って一瞬で走り去っていった。
「くっそ、あいつ…また逃げおって!」
悔しがっている鬼頭を前に、翔は
"変化を運ぶ鳥" をじっと見つめていた。




