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「んー?誰が?何に?」
「っ…!…クマ助!いつの間にっ…」
いつの間にか隣にちょこんと座っているクマを見て目を見開く。
あぁ、瞬間移動してきたのか、と納得し、苦笑いした。
「君も里桜の任務に行っていたのかい?写メを見たよ」
「途中で合流してやっただけだ。それよりお前、髪が乱れてんぞ。いつも縛ってんのにどうした」
「あぁ、里桜に言われて、任務以外のときはハーフアップにしとかないといけないんだよ。こーやって…」
そう言いながら翔は、里桜から貰った紺とシルバーの髪留めでハーフアップに結んだ。
「で?誰が何に負けるなって?」
全てを見透かしたようなこのビー玉のような丸い目に見つめられると、たまに気味が悪くなる。
「いや…。こっちの話さ。」
「どっちの話だ」
「………。」
相変わらず、自分の興味の示したことには容赦がない。
翔は苦笑いしながら口を開いた。
「ちょっとね。自分に負けそうなだけだよ。」
「…ふぅん」
「……はは…」
自分がしつこく聞いておいて、相変わらずの素っ気ない返事に逆に元気が出ることもある。
「人間だもんな」
しかしその言葉に翔の目が見開かれた。
「人間の扱いなんて、されてこなかったよ…」
「だが中身は他となんら変わらない人間だろう」
「っ…」
心臓がチリチリと不思議な痛みを帯び始めた。
そうだ。
そうなんだよ、クマ助。
だから傷ついたりもする。
だからブレたりもする。
全てを…終わらせたくなることも。
むしろなぜ私は今まで…
昴のような意見が出てこなかったのだろう…
その方が…おかしいはずなのに…
「…ただ認めたくなかっただけなんだ。」
「あ?」
「…私も所詮…弱者と一緒なのだと…」
そのとき突然、
バイクが止まる音がした。
顔を上げれば、目の前にはヘルメットをとってこちらに歩いてくる巻き髪の美人がいる。
「やっほーい!!天馬ひっさしぶりやーん!」
「えっ…あっ!もしかして…伊集院楓さん!」
「いやーっ!さっすが天馬!覚えててくれて嬉しいわ〜!さっき鬼頭に会った時なんて、思い出すまでに20秒もかかったんやで!いっくら1年ぶりでもヒドない?!」
伊集院楓はいつもさすらいのようにふらついていて、誰も居場所を知られておらず、翔も一度しか会ったことがないが、その強烈なインパクトはなかなか忘れられないものなので覚えていた。
「前回お会いした時と髪型違うんでちょっと一瞬戸惑いましたけど」
「あぁ〜前回は刈り上げてたっけなぁ?これもどうや?なかなか乙女チックでえぇやろ?」
楓はドヤ顔で巻き髪をくるくると指に巻き付けながら、ふと顰めっ面のクマにようやく気がついたようだった。




