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翔は外のベンチに腰かけ、俯きながらボーっと地面を見つめていた。




疲れたな……



何度も同じことを繰り返してる。


魔術に目覚めたあの日から…。



目覚めたのは12歳の頃。

純粋な魔術師の家系の中ではこれは遅い方だ。

でも私の家系は違う。

先祖を遡れば、私のように魔力を持つ者はいたらしい。


異形のものが見えるようになり、聞こえるようになり、

更には自分の中に取り込めるようになった。

出せるようにも。


当然、こんなことは誰にも言えなかった。


言ってしまったのは妹だ。


なぜならある日、

妹、棗は常人には無い魔力で小学校のクラスメイトを傷つけたからだ。



「お兄ちゃん…っ!どうしてみんな見えないの?!聞こえないの?!分からないの?!私はただっ!助けようとしただけなのに!!」



私はまだ幼い棗の立場を守りたくて、周りには自分の力や異形については一切を口外するなと言いつけた。


それでもやはり、小学校では浮いた存在になってしまっていたらしい。


ひたすら気味悪がられ、遊んでくれる友達などいない。

他者との触れ合いを求め、関係性を学び、人格を形成する最も重要で繊細なまだ幼い少女がだ。


それでも彼女は私の言いつけを守っていた。

仕返しはおろか、泣き言も愚痴も言わない、何をしても根を上げないのをいいことに、どんなに苛めてくる者たちが居ようと…。



人には無い力を持つ側の者には、こんなことは全く珍しくないだろう。



しかし



だからと言って、ただ耐え忍び、黙って受け入れ続けているのが正解なのか?

仕方ないと諦め、強さ故のさだめなのだと、自分に言い聞かせ続けることが?


これこそが理不尽なのではないか?



運命は自分で変えていくものだ。


自分の生き方は、

自分の価値は、


自分でいかようにでも変えられるのだから。





限界になった棗はある日爆発した。


自分の中の魔物を発動させてしまったのだ。

見えない常人の子供たちは、ただ棗を中心に巻き起こった竜巻のような何かに吹っ飛ばされたと思っただろう。

しかしそれは勿論異様であり、学校側で大問題になった。


そこで棗は、咎める両親に遂には暴露したのだ。

お兄ちゃんと私は、特別なのだと。

でも特別なのが、いけないこと?

選んで生まれてきたわけじゃない。

と。



両親は遡った家系の中に魔術を扱う先祖がいたことを知っていたようで、意外にもそれを説明した上で冷静だった。


そして、魔術学校へ行くように言った。


当然だ。力を制御できなければ、普通の学校、普通の社会には居られない。



だが私は、妹だけでも「普通」に生きてほしかった。

普通の中学生、高校生、大学生になり、

いつしか普通の人と結婚し、子を産み、

普通に幸せな女性として生きていってほしかった。



だから私は……


ある日、棗の魔力を吸い取った。



その時の私は、特別な魔物を自己の中に掌握していたからだ。



棗は今では、ただ中途半端に魔力と言えないほどの力があるだけだ。




だってこの世界に来たら……




夏樹「天馬さんのようになるのが夢です!!」



自分に向けられる笑顔は

いつも冷たくなる。




毎日、こんなことの繰り返しだ。


なんの価値もない…


私たちの価値を見誤っている連中に…

命をかける価値が…。


守る、価値が…。


こんな日々を過ごす、価値が…。


そして、矢作の死にも…。






京介「私たちがいる意味って、あるんですか…?」



里桜 「仕方がないよね。特別なものを持ってる私たちの生き方は弱者を助けることだから…」



昴 「俺も里桜も、翔みたいにリアリストじゃねーってことさ。できる限り、幸福な人生を享受していたい。あるはずの青春を謳歌したい。いつ死ぬかなんて分からねーんだからさ。」





"…死は万人に共通だ。誰にだっていつかは訪れる。その死をできる限り呪いによって理不尽を被ることの無いように非術師を助けていくのが私たちの役目だろう"


"お前はそれで満足なのかよ翔。"


"・・・は?"


"お前は俺をなんだと思ってる?俺だって人間なんだぞ。人生を選ぶ権利も選択肢もあるはずだ。死に方を選ぶ選択肢だって、あるだろ…"






そうだな昴。


少し、わかってきた気がするよ…



でも…私は…





「…耐えろ…。」






ずっと、自分に言い聞かせてきた。



強者としての責任を果たせ…





それでも


わからなくなる





「…くそ……」



ブレたら負けだ。



己に打ち勝て…




「負けるな……」




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