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学校に帰ってからは、日和に「任務報告書」の書き方を指導した。
「えーっとね、まず今日の日付とそれから名前。…で、ここの件名のところに場所を記入して。」
日和は言われた通りに書き始めた。
里桜は皆のそれぞれの報告書が挟まったファイルを取り出し、パラパラとめくる。
探すのはやはり翔の報告書だ。
1番字が綺麗だし、なにより書き方が丁寧。
いつも、なにもかもがさすがだと思っている。
「日和くん、これが良い例だよ!」
そう言ってファイルからそれを抜き取り、机に置いた。
その翔の報告書には、達筆な字でこう書かれている。
△月△日 氏名 天馬翔
件名…渋谷区内廃マンションにて魔物討伐
内容…103号室にてB級魔物4体を発見、抜祓。
205号室にて準A級魔物1体を発見、抜祓。
(すべて取り込み済)
問題点及び改善点…事前情報より数が多かった。
備考…かなり不味かった。
鬼頭のコメント欄には、◎と、お疲れ。と書かれている。
かなり不味かったには少し笑ってしまったが、確かに魔物は酷い味だ。
それは里桜にもよく分かる。
ともかく、翔の報告書は完璧だ。
一緒に任務に行った時や、昴と3人で行った時などの報告書もいつも翔が書いてくれる。
里桜はまたファイルを捲りながら、今度は昴の報告書を見つけた。
かなり雑な大きめの字で書かれている。
△月△日 だっけ? 氏名 かみつか
件名…空欄
内容…A級と準A級を倒した
問題点及び改善点…ガキに見られそうになったくらい
備考…ちょっと建物くずれた
鬼頭のコメント欄には、説明しろ!とだけ書かれている。
クマの報告書の方がまだマシだった。
ページを捲っていくと、クマと昴の報告書があった。
なんと2人の字が行き来していて、会話のようにもなっている。
△月△日 氏名 クマ・神塚昴 つーか名前くらい自分で書け!
件名…クソでけぇ森。←自殺の名所らしーよ。
内容…細けぇのうじゃうじゃ。ほぼおいらが討伐。←いや俺もやったから
A級1体の幻聴に神塚がやられてたところをおいらが救助。←やられてねぇ!あとグラサンこいつに飛ばされてなくしましたー
下級魔物が集まりやすい場所だと思った。A級は人間の潜在意識に入り込むのに長けてて…おい!なぜおいらばかりが書いてる!あとはてめぇが書け!←ヤダ
問題点及び改善点…クマ野郎がうっせぇ。←てめぇほどじゃねーよ
備考…神塚が一閃発動。森(補助監督の森だぞ)のガムをイチゴ味に変えさせた。
鬼頭のコメント欄…報告書で言い争うな!関係の無いことを書くな!
と書かれている。
里桜は、日和が一生懸命報告書を書いている隣で必死に笑いをこらえながらまたページを捲った。
今度は翔と昴の報告書だ。
これも2人の字が行き来していた。
△月△日 その日付の上に線が引かれ、達筆な翔の字で訂正されている。
件名…世田谷のあれ
あれの上に線が引かれ、世田谷区三宿の〇〇ビルにて発見した魔物討伐。と翔の字で書かれている。
内容…B級魔物をそれぞれ討伐、A級が屋上にいたため昴を魔物に乗せて送った。
あとは昴が書け。←ヤダ←なら私は知らん
問題点及び改善点…なし
備考…かけるの魔物に乗って帰りたい←ダメだ
鬼頭のコメント欄…ふざけるな!
里桜はついに笑ってしまった。
日和は自分が笑われたのだと思ってペンを止め、怯えたような表情で里桜を見つめた。
そのとき、
〜♪
「っあ!翔だ!…もしもし?終わった?」
«うん終わったよ。もう高専に着く。»
「今、日和くんに報告書の書き方をみっちり教えてるところだからちょっと待ってて!」
«わかった。じゃあ外のベンチにいるね»




