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そんなこんなで、何度かこのようなことを繰り返し、日和が一体ほどやっつけることができたところで、里桜の操術が全ての魔物を祓って任務は終了した。
ここから高校までは、歩いて15分ほど。
補助員全ての車が出払っているというのもあって、3人で歩きながら帰ることにした。
クマは自身の魔力が届く範囲内であれば、己の身を瞬間移動させることができるため、今日は森さんを足に使っていなかったらしい。
「日和くん、あの調子だよ。とにかく魔力を無理やり術式に乗せようとすると、バランスが乱れて集中力も削がれるし、攻撃範囲がずれるから。というか、そもそも魔力はどこからやってくるかを知ってる?」
にこやかに日和の顔を覗き込む里桜に、日和はまたドギマギする。
「…えっと、自分自身の負の感情…ですよね」
「そうっ。自分自身の負の感情を火種に魔力を捻出して、魔物と戦うということはつまり、どんな状況下でも自分の感情を一定に保つ必要が出てくるってことなの。」
「日和、てめぇは魔力が少なすぎるからな。このままだと確実によえーまんまだぞ。術を使用するために、一定量の魔力を維持し、さらには長時間使えるように持続性も必要なんだ。」
クマのその言葉に、里桜も真剣な顔をして付け加えた。
「だからね、魔術師はいついかなる時でも、魔力を捻出して戦わなきゃいけない。そのために、ほんのわずかなエネルギーから魔力を捻出する訓練を今日みたいにしていかなくちゃ!」
「はい…精進します…」
里桜がにっこりと頷いたあと、上を見上げてため息を吐いた。
「それにしても〜、やっぱり天災の影響は大きいね…ぜんっぜん休みがない…皆揃うこともできなくなってるし…」
クマはそんな里桜の脇に抱えられながら、うーと唸った。
やはりクマも寂しさを感じているらしい。
「魔術師が己の負の感情から魔力を生み出すように、魔物は人間の負の感情が集まって産まれることになるんだ。だから単純に人間の数が多ければ、それだけ厄介な魔物が産まれるっつーこった。しかたがねぇ。」
「…うん。」
「そもそもな、地方に比べて東京で産まれる魔物が厄介なのは、負の感情の量はもちろん質によるものだからだ。
単純に住んでる人間がクソ多いから、負のエネルギーが生まれやすいし、その質もドス黒い。めんどくせーことこの上ねーわ。」
「だね…天災の影響はほんっと大きかった…」
3人とも矢作夏樹のことを思い出して顔を曇らせた。
そして、クマがウンザリ気味にため息を吐く。
「はぁ… 天災に対する人間ならだれもが持っている負の感情…自然に対する畏敬の感情から産まれる魔物は、超強力なやべぇー魔物になる。
S級の神塚や翔らへんしか、安心はできねーな、おいらは。」
「そうだね…私ももっと頑張らないとなぁ…」
「あいつらを基準に考えるな。奴らは次元が違うと思った方がいい。
とくに神塚に関して言えば、元々の才能もあって、覚醒した今では術が最強クラスになってる。身体能力はS級魔物を屠るほどの力だし、対複数人を相手にした複雑な戦闘も平気だ。」
「そっかぁ…やっぱ適わないなぁー」
「しかもあいつは魔力コントロールにも長けてるから、今なんて治癒エネルギーまで完璧に操作して常に身体を最良の状態に維持してる。今では全てに隙のねぇ、おいらをも凌ぐかもしれん最強の存在だ。グラサン野郎は。まぁもちろんほぼおいらのおかげだがな!」
「えー、じゃあ翔は?」
「翔の野郎も今じゃS級魔術師だかんな。あいつの強みはなんと言っても操術によってかなりの数の魔物を使役することができることだ。
魔物の数だけ攻撃・防御パターンが存在するわけだからな。A級の魔物もけっこー持ってるしあいつ。」
「いーなー。私まだA級は2体しか持ってないよー。しかも一体は翔から奪ったやつだし!」
少し笑って見せたが、同じ操術を扱う者としてとても悔しい。




