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あれから結局、
京介は何も喋らなかった。
"僕は…天馬さんのような魔術師になりたいんです。
天馬さんみたいに、真を持っていて真っ直ぐで…そんな強くて立派な魔術師に…"
そう呟いていた矢作夏樹という1人の魔術師はもういない。
現実は、いつだって忙しなく、
悲しみに暮れている余裕すら与えてくれなかった。
目の前から大切な仲間が消える。
それは里桜にとっては初めてのことだった。
しかし実際のところ、こんなことは珍しくはない周知の環境のはずだ。
ただ、忘れていただけだった。
違う。
目を背けていただけだった。
自分たちの生きている世界は異常で、
でも誰かがやらなきゃならなくて、
命を懸けている世界なのだと。
それから数週間が過ぎて、
またいつもの忙しない日常は繰り返されていた。




