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ボロボロの夏樹に肩を貸してなんとか歩いていた。
「……壱屋ぃ…僕…こんなに怪我して…
…天馬さんに怒られちゃうかなぁ…」
「……でしょうね。」
「はは…どうしよ、怖いなー…天馬さんああ見えて、マジギレすると怖いんだよー…」
「知ってます…」
「一緒に怒られて〜…」
「嫌です、せいぜい頑張ってください。」
「えー…ゴホッゴホッ…ゲホッ…壱屋のけちぃ〜…」
「もう喋らないでください。頼みますから…。」
しばらくして、ピタリと夏樹の足が止まった。
「……ぐ…っ…下ろせ、壱屋。」
「……ダメです。耐えてください」
「いいから下ろせ!!」
こんな状態でそんな声量が出せるはずはない。
なのに、夏樹はものすごい大声でそう言った。
ゆっくりと下ろし、建物に背を預けさせた。
夏樹は自嘲気味に笑っている。
「…ふふっ…壱屋…」
「なんですか。」
「僕ねぇ…これは言うかすごく悩んだんだけど…」
「…これ…とは。」
「…これを言ったらきっと…壱屋は今後ずっと苦しい思いをするだろうから……でも…言わなかったら僕…絶対後悔する、だろうからっ……」
夏樹は苦しそうに顔を歪めながら、徐々に目が虚ろになっていく。
「…言ってください」
「もう僕は…ダメだ。だから…最期は悔いなく終わりたいんだ…」
「…だから…なんですか……」
正直、その先を聞くのが怖かった。
でも、聞かずにはいられなかった。
「…壱屋、あとを…頼んだよ。」
そのまま夏樹は動かなくなった。
ダメだ矢作…
その言葉は "呪い" だ。
永遠に私を呪い続ける。
いつか死ぬその時まで…。
"あとは頼む"
それは、言われた者を呪ってしまう。
だから…残された者に、
それは決して言ってはいけない。
"魔術師は時に、
仲間に“他人のために命を懸けること”を強要しなければならねーんだ"
クマの言っていた言葉が反芻された。




