ポインセチアよりも赤い
そしてクリスマス当日になった。
昴はクマと共に補助監督の森の車でケーキを受け取りに行っていた。
今では森は完全にクマの言いなりだ。
言いなりというか、とても仲が良いともとれる。
「おいなんだあの行列は。」
クマは背伸びをしながらひょこっと窓の外を覗いて言った。
「あぁ…ケンタッキーですね」
森が毎年のこの光景、その長蛇の列を見ながら苦笑いする。
そして運転をしながら柄にもなくチョコシェイクを吸った。
「けんた・・・」
「あ〜クマ野郎は知らねぇよな。ケンタッキーってのはチキンの店!なんたって今日はクリスマスなんだから。」
昴はバニラシェイクを吸いながら言った。
その隣でクマが顔を険しくする。
「あぁん?クリスマスはチキンじゃなくてターキーだろ。そうおいら言ったよな?あれは事実だ。」
「まー本物はそうかもしんねーけど、日本人にはクリスマス=チキンっつー習慣がついちまってんだよ。つかなんだってよくねぇ?そんなの。」
「いいわけあるか。神に対して勘違いも甚だしいな、罰当たりな異教徒め。
神への冒涜罪に値する。誕生日を祝う資格はない。」
クマは不機嫌そうにイチゴシェイクを思い切り吸い上げた。
ここ数日間だけは祝日などを挟んで一応冬休みだ。
ひとまず何事もなく全員でクリスマスを迎えることができて誰もがホッとしていた。
昴の指示で、翔が矢作夏樹にトナカイのコスプレを持っていくと、彼はまたいつもの仔犬のような顔で目を輝かせた。
「着ます着ます!!天馬さんが去年着ていたものですし、天馬さんの役目を引き継げるなんてめちゃくちゃ光栄ですよぉ〜!!嬉しいなあ!!」
こんなに良いように受け取ってくれてしかも喜んでくれるのは夏樹だけだろう。
「壱屋のは無くて悪かったね」
翔は冗談めかして笑って言った。
「あっても絶対に着ません。誰の指示であろうと。」
「クマ助の指示には従うのにかい?」
「そっそれは、私も飲みたいからです。」
京介はスウェーデン産の酒をドンとテーブルに置いた。
「なぁ、翔。あまり派手にやらかさないでくれよ頼むから」
そう苦い顔で言ってきたのは鬼頭だ。
未成年の飲酒をなぜだか黙認している教師。
こんなのってありか?と思いながら翔は朗らかに笑う。
「とりあえず鬼頭先生は、ホールケーキ最低1個は消費してくださいね」
「おいまたそれか?勘弁してくれよ…」
「その他諸々の文句は昴にお願いしますよ。」
その時後ろから呼び止められた。
「翔くん?里桜ちゃんを知らないかい?」
「…理玖さん。里桜なら私の部屋です」
「また君の独り占めかい?妬けるね…」
「そうしたいのは山々なんですけどね…今日ばかりはそうはいかないんですよ。」
理玖は何かを察したように目を細めてペロリと唇を舐めた。
「…なるほど?それは私も楽しみだ…ターキーよりも美味しいかもしれない…」
里桜に頼まれていたターキーやオードブルを次々と並べていく理玖を見たあと翔は足早に部屋へと戻った。




