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注文を聞き取った店員は朗らかな笑みを浮かべながらそれを繰り返したあと、付け加えた。
「今、カップルの方限定で、食後に季節のタルトをサービスしておりますが、いかがいたしますか?」
「はいはい俺らカップルでーす!あとそこにいるのもカップルでーす!」
昴は間髪入れずに瞳の肩を抱いて、里桜と翔を指さした。
店員はまた笑みを浮かべてから、かしこまりました。と一礼して去っていった。
「おい神塚!ふざけんな。あんたとそんなふうになった覚えはねーよ。だいたいねぇ、私は甘いもんはそんな好きじゃないんだよ!」
瞳は当然不機嫌な顔をして瞬時に昴の手を振り払った。
「ハハハハハ!クマ野郎にあげりゃいーだろ〜」
「言われなくてもそーするよ!!」
昴はゲラゲラと笑っていて、そして里桜も翔も噴き出した。
みんな揃って外食なんていつぶりだろう、きっと夏休み以来だ。でもやっぱりこのメンバーは楽しすぎる。
そう思って里桜はすっかり今日の失態のことは忘れてしまった。
「てかさぁ、クリスマスもうすぐなんだよ?ここでそんなに甘いもん食って誕生日にもあれだけ食ったのにさー、今月どんだけ糖分摂取するつもりなんだよ。体おかしくなっても知らないよ?」
瞳の呆れ声に、昴は余裕の笑みを浮かべた。
「まだまだ足りないんだけどー?あっ、ちなみにケーキは15ホールもう注文済み!あと里桜のサンタコスも注文済み!」
「おい昴!私の許可をとってからという約束だったろう?」
「そーだったぁ?」
「見せてみろ。あまり過激なものだったら今度こそ君の碧眼をほじくり返すからな!」
いきり立っている翔の前に、昴はニヤつきながらスマホの画面を見せた。
すると、ますます翔の眉間のシワが濃くなった。
「どおー?かなりいいっしょ?」
「やはり君の碧眼は腐っているらしい…」
「いや、ギリおっけーっしょ?もう注文しちゃったもんね〜♪」
「・・・」
翔はため息を吐いて考え込むように腕を組んだ。
里桜は不安の表情で交互に2人を見つめる。
「ね、私にも見せて?サンタコスはOKしたけど、どんなものかはもちろん本人である私の承諾が必要でしょ?」
「まずおいらに見せろ昴!」
突然クマが昴のスマホをひったくった。
そしてたちまち笑いをこらえるようにして肩を震わせた。
里桜はたまらずクマからスマホを取り、それを見て目を見開いた。
パッと見はサンタの女の子用コスプレだ。
しかし、ほとんどキャミソールのようなノースリーブの短いトップスに、へそ出し。
かなり短いファー付きのスカート。
帽子は普通だが網タイツに膝から下までのレッグウォーマーと、肘から手首にかけてのアームウォーマー。
なんとも色っぽい、というかいやらしいコスプレとしか言いようがない。
里桜は普通のズボンのサンタさんコスプレだと思っていたのだ。
「ちょっ…とま…これ…本気?」
瞳はどれどれ〜?と言って里桜からスマホをとり、そしてニヤニヤ笑った。
「いーじゃんこれ。かなり似合うと思うよー?」
「だろ?わかってんじゃん瞳。」
昴も瞳も満更でも無い様子だ。
里桜は顔が赤くなっていた。
「嫌ならハッキリ断るんだ、里桜」
翔のその言葉に、すかさず昴がわりこんだ。
「翔〜!そろそろ素直になったらー?彼女のそれ着たところ見たいって。」
「…あのなぁ…まぁいいわかった。正直言えば、見たいには見たい。でもその姿を他の人たちに見られるのは良い気はしない。」
「えっ?翔が見たいなら着るよー!」
すぐさまそう言い返してきた満面の笑みの里桜に、昴も瞳も笑いをこらえた。
翔は目を見開いている。
やはり翔の言うことならなんでも笑顔で受け入れてしまう里桜は純粋なのか天然なのか、天使なのか小悪魔なのか、ただの一人の男を愛してやまない女というだけなのか。
ほどなくして運ばれてきたタルトを笑顔で頬張る彼女に、その場の空気はいつの間にか柔らかいものに支配されていった。




