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なんとか高専に、夕方には戻ることができた。


「あ〜つーか、さいっあくだよ!あのグラサン気に入ってたのにぃ〜!クマ野郎のせいだからな!」


「てめぇが心掻き乱されてんのが悪ぃんだろーが。

にしても……人間はやはりどんな奴でも弱いんだな…」



クマを脇に抱えながら廊下を歩いていた昴が突然くるりと踵を返し始めた。


「なー、俺グラサン買ってくるわ今すぐに」


「ああん?」


「あれがねぇとやべえんだよ。目が疲れちまってしょうがない。最悪、目が潰れる。」


クマはドゴッと昴の脇腹を殴った。


「っう!なんだよ!」


「一旦教室に戻れ!!」


「だから俺の話聞いてたか?!この綺麗なお目目が潰れたらどーしてくれるわけぇ?!」


「潰れねぇよ…それにな、万が一潰れちまったら、おいらがお前の目になってやる…」


立ち止まったまま、見つめ合い、暫しの沈黙が流れる。

ポカン顔の昴と真剣なクマの瞳が交わる。


「・・・え」


「いいから戻れ!!っつってんだよ!!」


あまりのクマの気迫に昴は根負けした。

不機嫌そうにつかつかと歩きながら、んだよこいつ…と呟く。

クマは脇でひたすらスマホをいじっている。



「はぁーあ…しゃーねぇ…

アイマスクどっかにあったっけなー」


そう言いながら教室のドアを開けた。


ガララッー…


パンッ!!!


「っっっ?!?!?!」


「「ギャハハハハハハハハハ!!!!」」


皆の笑い声…


何が起きたのかわからなかった。

自分の視界が遮られていて何も見えない。


もしかして……


「俺の目ん玉ホントに潰れたー?!?!」


「違うよ昴。」


瞳の声が聞こえた。



「お誕生日おめでとう〜!!!!!」


里桜の明るい声。



「おめでと、昴。ぶふっ…」


翔の噴き出している声。



「おいてめーら!おいらにもクリームかかっちまったじゃねぇかよ!」


クマが脇からするりと抜けた。



顔に手を当てる。


ベトベトの感触。

甘ったるい匂い。


口に入ってきたその味。


「………甘……」



これがケーキなのだということを認識するのにそう時間はかからなかった。


目を擦りつつ片目を開くと、大笑いしている3人と、

クマが、うめーと言いながら顔にかかっていたクリームを舐めているところだった。


「あーははっ!やばい笑いが止まらないっ!けどっ

見事命中してよかったあぁ〜結構緊張してたんだよ」


「ふははっ…里桜の呪力コントロールはかなり正確だったよ」


里桜の頭をポンポンしながら褒めている翔たちを昴はボーッと突っ立ったまま見つめている。



「あれぇ?感激しちゃって喋れなくなっちゃった感じー?」


瞳の言葉に、昴は一気に我に返った。


「おいっ!ふざけんなよ俺の美しいお顔をどうしてくれる?!ほんっとこーゆー時にグラサンしてないとかマジ不運。」


里桜に渡されたタオルでケーキを拭う。



「はい。改めてお誕生日おめでとう。」


開けた視界から、にっこり笑う里桜が映る。

その手にはプレゼントの箱。


「・・・あ、りがとう」


「開けてみてよ」


「ちょっ、と…待てよっ、手ぇ洗ってくる!!!」


どこか照れたような顔でドタバタと走っていってしまった。



3人は顔を突合せて笑う。


「はー面白かったぁー」


「昴が照れてるところを見られるなんて、ホント一年に1度しかないならな」


「あとあいつのマヌケ面もね。にしてもあの様子だと誕生日忘れてたっぽいね。去年は祝え祝えってうるさかったのに。まぁ、あんなことがあった後だしね…」


その言葉には皆表情を歪めた。



「おいらマジ焦ったぜぇ。あのバカがグラサン買いに行こうとするから」


里桜はありがとうの気持ちを込めてクマの頭を撫でた。

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