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"ホントは逃げ出したいくせに"
"ホントは目を背けたいくせに"
昴の笑みが消えた。
"終わりにしたいくせに"
"幸せになりたいくせに"
「あぁ……だな…確かに…」
"全部終わりにしろ、楽になれる"
「いや…仲間を置いてくわけにはいかねーよ…」
"何も背負う必要はない"
"他人に命を賭けるほどの価値はない"
"早く自分自身を解放しろ"
"逃げて幸せになれ"
「……でも俺はさ、だとしてもあいつらと一緒が…」
昴は拳を握り締めた。
頭の中に浮かんできたのは…
「…昴!こっちに来い!」
「昴〜!早く〜!」
「昴!早くしろよっ!」
「えっ?!お前ら…どこ?!」
突然聞こえてきた、翔、里桜、瞳の声。
その声の方へと、1歩2歩と足を動かす。
「私と逃げたいんだよねっ!昴!
もういいじゃん、一緒に行こーよ!
こんな現実から逃げてさ、幸せな世界に行こ!」
「…… 里桜」
「普通の人間として、普通の生活してさ。
普通の青春を過ごそ!私と!ほら早くっ!」
昴はクスリと笑った。
「うん……そうだよな……そうす…
……る!なんて言ったと思うかぁあ?!
あははははははは!!!」
腹を抱えて笑っている昴のサングラスを、
クマがビュンと吹き飛ばした。
「おいてめぇ!グラサン外せと言ったろうが!」
「めんごめんご!あははは!っひ〜!ぎゃはは」
笑いつつも、迫って来た無数の攻撃を昴は祓った。
本来これは透明のはずで、碧眼発動中だからこそ見えたもの。
「っ、おっと意外としぶといねぇ?」
A級ともなれば、もちろん簡単には行かない。
魔物は余裕そうに見える。
「集中しろ昴!!心を乱すな!!
全神経を"今"に集中させろ!!!」
「・・・」
なんだかんだ言って、心が乱されていたことは昴も気がついていた。
欲しくてやまない言葉を、欲しくてやまない人から言われた。
乱されないわけがなかった。
「集中しろ神塚昴!!!
己の魔力を体に乗せて打撃攻撃を放て!!
魔力を体の動きに合わせろ!!」
あー…俺は…あの時正直…
答えてしまいそうになった。
でも…最後まで言わなかった。
決断しなかった。なんでか分かるか?
わかんねぇよな……お前ら魔物には……
ビリビリビリビリ
パギギギギギギ
昴の間合いから黒い稲光が鳴り始めた。
「……****…!!!」
バガガガガガガーン!!!
ドッカーーーン!!!!!
地表が大きく割れた。
昴の拳の下には息する暇も無かったほどに一瞬で潰された魔物の残骸。
「……え……俺、今……」
「おう。"一閃打隕" だな。」
「…ま…じか……よ…」
それは、己の魔力と打撃のインパクトをジャストのタイミングで叩き込むことで可能な技。
その威力はかなりのもので、通常攻撃の2~10倍と言われている。
しかしこれは相当難易度の高いものでもあるし、尚且つ、己の体を支えられないこともありかなりの危険が伴う。
なにしろ神塚昴の10倍ともなれば、この周辺の県がいくつか消えそうだ。
今回は初出だからか、2か3倍だっただろう。
しかしあまりの威力なのが周りの状況から一目瞭然だ。
跡形もなく半径5mが消えている…




