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「壱屋、おいらから見るとお前は今後、もっともっと強くなっていくはずだ。かなり伸びしろがある。だがな、お前が魔術師にやりがいを感じてねぇことも知ってる。だから無理に続ける必要はねぇよ」


「え……」


「卒業したら、やりてぇ事をやれよ。金融系のリーマンでもやったらどーだ?パッと見の外見はまさにそんな感じだ、くくくくくっ…」


「……まぁ…そうですね… 魔術界の歪んだ構造かつしがらみと比較的無縁な場所に身をおけるならば、それも悪くはありません。」


あの1件はやはり、五条や夏油だけでなく、壱屋たちにまでかなりの影響を与えた。

クマはどの者の心中もわかっていた。



「魔術師は時に、仲間に“他人のために命を懸けること”を強要しなければならねーんだ。このことに疑問を感じるのなら、お前はそっちの道へ進んだ方がいい。」


だがブラック企業でも文句は言うなよイッチー野郎。

と付け加えた。


京介はその言葉に、ハッとしたように目を見開いてクマに視線を移す。

クマは至極呑気な表情でまだ風船ガムを膨らめている。




「…っ!?」


その時、目にも止まらぬ早さで迫ってきた大型な魔物に、壱屋は武器を振った。


察するにこれはB級くらいだ。


バガッ

シュンッ

ジャリンッ



クマは表情をまったく変えずに、ガムを噛みながら遠くでそれを見守っているだけ。


しかし、京介にもその行動の意味はわかってはいる。

クマが毎回いてくれるわけではない。

誰もがたった1人で単独任務を無事こなして自分の命は自分で守れるくらいに強くなってほしいとの考えだろう。

多分…。そう信じたい…。



「かなり速かったが、よく気づいたな壱屋。」


「…っく…あなたはっ…やはりなにもっ…しないんですねっ…!」


「おう、ほらもっと力出せ」


クマとお喋りしている場合ではない。

凄まじい乱闘はなかなか蹴りがつかないので徐々に焦ってくる。



「おいイッチー!あそこを崩せ!」


「…はいぃ?!」


そこには何メートルもあるゴミの山。



「瓦礫に弱点を付与しろ!」


京介は言われた通りにした。


バキバキバキバキ!!!!

ドガガッ!!!



それによって魔物は瞬時に押し潰された。


「……おぉ…」


京介は自分でやっておいて驚愕してしまった。

弱点を付与した建物を攻撃し、屋根や壁面を崩落させて敵を押し潰す。

まさに自分自身をも巻き込みかねない危険な術であるが、そんな術が今まさに生まれてしまった。



いつの間にかクマは隣にいる。


「破壊した対象に魔力を篭める付与術。

せっかくだから名前でも付けろ。あーそうだ、バキバキいっちゃってたからバキバキなんてどうだ?ぶははっ」


盛大に噴き出すクマを横目に、京介は呟いた。


「…バキ……刃牙…か…。」



この技が、のちのちどこかで京介を救う切り札の技となることは、今の京介はまだ知る由もなかった。

それはまだ何年も先の話……




「おし、片付いたようだからとっとと帰るぞ」


そう言ってクマは首から提げていたスマホを操作し耳に当てた。


「おー、森!終わったからはよ迎えに来い!」



「……あの…なぜ今回も森さんなのですか?森さんは2学年担当の補助師では…?」


「あいつはおいらの部下なんだよ。」


無理矢理そのように扱っているだけでは…と思いながらも京介は今回の任務でますますクマに対して驚愕してしまった。



「あっ、そーいえば!イエスキリストの誕生日に、スウェーデンの酒を持ってこい!前に夢の国でスウェーデン産の酒を飲んだんだが、あれはなかなかよかった。」



「・・・」



突然何の話だ?


全く脈略のない話に、京介はますますクマのことが分からなくなったのだった。

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