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頭を撫でながら、目と鼻の先にいる美しい翔の顔は、とても不安そうな表情をしている。
あぁ……私はこの人に、こんな慈しみを込めた目で見つめられている……
「大丈夫。私の初めてを捧げたいと思うのは
…翔だけ…なの…」
翔は眉を下げ、何か言いたげに少し口を開きかけたが、軽く息を吐き意を決した様な表情をした。
「いいか?無理ならすぐ言って?」
こくんと彼女が頷くのを確認し、そしてー……
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里桜は徐々に痛みを感じなくなり、ゆっくりと翔を見上げた。
そして、ハッと息を飲む。
今までに見た事のない表情の彼がこちらを見下ろしていた。
心配そうに眉を下げ、しかし慈しみを込めた優しい顔。
そして何より、息を荒らげ、男の色気を存分に醸し出している愛しい人が、今まさに自分を抱いてくれているのだと。
そう思った瞬間から嬉しさだけが込み上げてきた。
「っは… 里桜っ、名前を呼んでくれっ…」
「ん…っ…翔っ…翔…ああっ」
「そんな可愛い声で鳴かれるとっ…く…
…耐えきれなくなる、よ…」
耳の中で舌が蠢きながら翔の艶かしい息遣いがダイレクトに脳に伝わり、一気に体中の力が抜けていく。
彼のモノを最奥まで受け入れた。
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「はぁ…ふ…ありがとう…翔…」
「礼を言うのはこちらだよ…」
翔は好きな子が自分を受け入れるために頑張ってくれた証を見つめながら複雑な気持ちになったがもちろん嬉しくないはずがない。
正直、思っていたよりも余裕の無くなっていた自分が里桜を優しく抱けていたかはわからないが、うっとりとして今にも瞼が閉じそうな彼女を見ていると、恐らく大丈夫だったのだろうと察し安堵のため息が漏れた。
ころりと胸に飛び込んできた里桜を優しく包み込む。
「ふふ…幸せすぎてどうにかなっちゃいそう…」
里桜は恥ずかしがりなわりに、言葉だけはどんなものでも恥ずかしげもなく口にするところが不思議だ。
「幸せ…か…」
彼女は本当に幸せなんだろうか?
人を助けたいと思って魔術を学びに来た訳ではなく、単に自分に連れてこられただけ。
そして、仲間の助けになりたいという思いだけで魔術師をやっていると言っていた。
その本音を聞いたのは初めてだ。
でも、むしろそれでよかったと思う。
ご立派な大義やらなんやらを君が背負う必要はない。
脆い君は壊れてしまうかもしれないから…
「…翔は幸せじゃないの?」
腕の中からくぐもった声が聞こえ、ゆっくりと頭を撫でながら静かに答える。
「君が幸せなら、私も幸せさ…」
だからずっと幸せでいてくれよ。
安心したようにたちまち聞こえてきた寝息に耳を澄ませながら瞼を閉じた。




