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昴の目の前には今、一人の男がいた。


「……なんで生きてんだお前?才輝の奴、しくじったな?」


「あのガキはどこだ。」


「もう用は済んだし、帰らせたよ。ちなみに俺はお前のお友達2人、死なねぇ程度にやったけど、運悪くあいつに出会ってたら今頃息してねぇと思うよ」



昴の目は恐ろしいほどの眼光を放った。



「殺す」



昴はオッドアイを開眼し、全神経を自分の魔力に集中させた。


男はウザったそうにため息を吐いた。



「はーあ。初めから俺が殺っときゃよかったかなぁ」





「……朝凪戦火……!」




バガガガガガ!!!

ドガガ!!!

バキン!!!



速い……

あのガキと同じくらい速い。


でも……

なんだろう?

今の俺はさっきの俺とは違う……



"お前はまだ本気を出したことがない"




クマの言ったあの時の言葉…


そうだな…俺は…




"お前にならできるんじゃねぇの、神塚昴…

理想の世界を一瞬で作ることくらい…"




そうだ、俺の覚悟が甘かったからだ。


何もかもがどーでもいいと思ってた。


なにもかもが本気じゃなかったんだ。




今なら……



「神塚秘術、夕凪戦火……!!」





どごごごごごごごーーーーん!!!!!




「おっと、危ねぇ。あのバカ…無鉄砲すぎんだろ」


クマは崩れ落ちる建物を瞬時に避けた。


危険極まりないその乱闘の間合いに入らないよう、遠くの高台から見下ろす。



「全神経を己のみに集中させろ…神塚昴。

お前は今、覚醒する…」




昴は空中で、自分に滾り出す力をただただ実感していた。




こちらを見上げながら、男は「化け物が…」と呟いている。



男が捻り出す技は、S級の者でさえ目視することは不可能なくらい速く、そしてパワーがある。


しかし今の昴には、その全てがスローモーションに見えていた。

そして身体は自然と動いていて、ただ心地良さを実感していた。




そうか……この男は……

魔術界でも有名な麻宮家の人間だ。


聞いたことがある。


確か1人だけ、麻宮家を抜けた人間がいると。

あの家系は才能重視だからか。

度々酷い話は聞いていた。


でもこの男は才能がないようには見えない。

ただ、"求められていた才能"が無かっただけだ。



そう、あの家系が求めているのは神塚家の碧眼……俺の眼をも凌ぐ特別な能力だ。



じゃああのガキは……?





「てめぇっ……いい加減死ね!!!」




「……夜凪……百戦火……!」





「終わったな…」


クマの小さな呟きはその凄まじい轟に掻き消された。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー




ボロボロになった男が目を虚ろにさせて血を吐いている。

昴はジッと見下ろしていた。



「あのガキはお前の子か」



「ふっ……実の子じゃねぇが。」



「……なに?」



「…………。」



あの女が妙な魘夢を見せたせいだ…


俺が抱いていたあの赤ん坊は……

才輝じゃない……。



才輝は俺と同じように、捨てられてただけだ。








そう、

俺もお前も才輝も、誰でもそうだ。


本当は…何の才能がなくても、何の能力を持ってなくても、世間に認められなくても……

ただ誰かに愛され、ただ誰かを……愛したいだけなんだ。






あの赤ん坊は………





「…幸愛(ゆきちか)…っ…」





麻宮政春は…死亡した。

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