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魔物に乗せて、なんとか翔を瞳の元へ送り届けた。
瞳の術によって翔は回復した。
「里桜…あんたは大丈夫なの?」
ひたすら翔の血を拭っている里桜に、瞳は顔を歪めて言った。
しかし里桜は翔から目を逸らさずに返す。
「私は少しかすり傷と打撲くらいだから治療は必要な」
「ダメだ。」
突然被せてきた翔の言葉に手を止める。
翔は苦い顔をして里桜の手をハンカチごと握った。
「きちんと治療してもらえ。私はもう行く…」
「えっ!私も行くよ!」
「ダメだ。ここで待ってろ」
翔はハンカチを握り締めたままよろよろと立ち上がった。
裂き切られた衣服をそのままに、踵を返す。
「っ待って翔っ!ほんとに…大丈夫なの?」
里桜の震える声には振り返らずに、青白い顔をした翔は思いのほか強く言い放った。
「これは私と昴の任務なんだ。最後までやり遂げる…」
いつもと口調も表情も、気迫も違う翔に、里桜は何も言えなくなった。
彼に待ってろと言われたら待っているしかない。
従うしか選択肢はない。
けれどまたあいつに出くわしたら?
クマはどこ?
こんなにボロボロになる2人を見たのは初めてだ。
この2人をここまでにしたなんて……
そんなのが存在したなんて……
こんなに胸が苦しくなったのは初めてだ。
里桜は呼吸すらも苦しくなっていた。




