才能の価値
「里桜〜。なんかおいら甘いもん食いてぇ〜」
突然脇に抱えていたクマが不機嫌な声を出した。
甘いものとか…悟にでも似てきたのだろうか。
「えぇ…もう、わかったよ。」
今日はクマにはホントに助けられたし、どこかファミレスかカフェにでも行こうと思い立った。
そしてその道中で見つけた可愛らしいカフェに入ったのだが、ここは新しくできた所らしく、とても今風でオシャレだった。
店内は、カップルか、女性同士しかいない。
「こんなのがいつの間にかできていたなんて全く気が付かなかったなぁ〜…」
「んー!なかなかうまいっ!」
クマはさっきからパンケーキに夢中だ。
なんとも可愛らしいデコレーションのパンケーキが、クマによってみるみる崩れている。
「そんなに貪らないで少しは落ち着いて食べなよ」
そう言いつつも、可愛い空間で可愛いクマのぬいぐるみと可愛いパンケーキが似合いすぎていて顔を綻ばせる。
チラチラと視線を泳がせると、何とも幸せそうなカップルたちが目に入り、途端に羨ましくなってしまった。
「…いいなぁ〜。私も翔と来たーい」
「悪かったなおいらで」
つい声に出してしまっていたことに気が付き、ハッとクマに視線を移すが、全く申し訳なさそうな顔はせず、生クリームを鼻までベチョベチョに付けている。
「翔とここへ来れたとしても、クマも一緒がいいと思ってるよ?」
「…なんでだ。」
たちまち怪訝な顔つきになるクマに、里桜はにっこりと笑って言った。
「だって私たちは、"家族"じゃん。」
あなたが生まれた時から、私たち3人一緒だった。
それからずっといつも一緒にいる。
だから家族以外の言葉では言い表せないよ。
クマはそれについては何も返さずに、黙々と食べ進めている。
里桜がまたふと斜めの席にいるカップルに視線を移すと、女性が男性に向かって、あ〜んとフォークを差し出し、男性がパクリと食いついて笑いあっているところだった。
「お前は食わないのか里桜」
突然の問いかけに、急いで目を逸らす。
「え〜だって翔たちが心配でそんな気分にはなれないよ。食べたいのは山々だけどさぁ〜どうも喉を通らなそうっていうか…」
さっきからちらちら目に入る色とりどりのスイーツはとても魅力的なのだが、到底そんな気分にはなれない。
困り顔で紅茶をすする里桜に、クマはもぐもぐ声で言った。
「じゃー、あいつ帰ってきたら、また来よーぜ」
「うん!だね!…えーそしたら私どれ食べよ〜」
数あるメニューに目を奪われていると、スマホが鳴った。




