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6

「あーごめんね、天馬。せっかく二人きりなのに邪魔しちゃって」


「…いや。」


瞳は心底申し訳なさそうだ。

翔は、ため息を吐いている昴の横に腰掛けテレビに目をやる。

画面はまだそのニュースだ。



「そもそもさぁ、一般の人間たちにはなぁんも魔力も魔術も見えねぇんだしさぁブラインドする必要あんの?っていっつも思ってんだけどぉ」


「必要だよ、絶対に。」


翔は足を組みながら呆れたように一喝した。


「見えなくても魔力のパワーは絶大だ。様々な形で人々に影響を与えている。それを見て見ぬふりをしていると後々、」


「あーはいはいっ!俺と違ってお前はいつでも正しいですよ〜っと」


言葉を被せて心底うんざりしたように言う昴に、至って冷静沈着な態度で翔は続けた。


「力や才能を持って生まれた者が、そうでない者を助けるのは責務だよ。そのために私たちは特別なものを持って生まれたんだ。」


「はー。あっそうですか。でも知ったこっちゃないんだよそんなの。俺は特別に生まれたいなんて言ってない。勝手に生まれただけ。」


「そういう問題じゃないだろう。子供か君は。」


手を頭の後ろで組み、見下したように仰け反る五条に、夏油は怪訝そうな表情をして睨む。



「そもそも俺は普通に生まれて普通の学校で普通の高校生活送りたかったからねー。勝手にこんな生き方強制されて迷惑極まりないね」


「昴……君って人は…」


「あん?なんだよ、人の人生に口出しする権利なんて誰にもねぇだろうよ」


各々の魔力をピリピリとさせながら睨み合いを始める2人に里桜はとにかくあたふたする。

瞳はやれやれと言った顔でチャンネルを変えていた。


「ちょっとちょっと、こんなとこまできて喧嘩はやめようよ!せっかく豪華なホテルにいるんだしさぁ!」


「じゃ、里桜はどう思うんだ?」


「里桜は私の言っていること分かるはずだよな」


「…えっ」


突然板挟みになるとは思わず口を噤むが、2人の視線が痛い。

助けを求めようと瞳を見るが、彼女はテレビのバラエティー番組に釘付けになっていて全く話を聞いていないようだ。


「…うん。そうだなぁ…私は正直、魔術師ってのがよく分かってないの。魔術師になったくせにこんな事言うのはおかしいけど…でも…私はただ自分らしくいられる場所にいたいだけ。自分を偽らなくてもいい場所がたまたまここだった。」


私が私でいられる場所。

それに1番近い場所が魔術師というポジションだった。

後悔はしてない。



「でも里桜も、人を助けたいと思っているだろう?」


翔の言葉に思わず目を逸らす。


「…私は…人を助けたいとも思っているけど…本当は…」


「…ん?本当は、なに?」


口篭る里桜の顔を覗き込みながら昴が急かすように言った。

いつの間にか瞳も訝しげに見ている。


「本当はね…誰かを助けたいというよりも、あなたたち皆の力になりたいと…思っているだけ…」


私に居場所を与えてくれた翔を。

そして翔が愛する世界と仲間たち皆のことを。



微妙な空気が流れ、ハッとなる。

不謹慎なことを言ってしまったかもしれない。

そう思って慌てて何かを言い直そうとした時、昴の笑い声が聞こえた。



「ははっ、いいねいいね、里桜らしいよ!」


「そうだな。君はその考えでいいよ、里桜。」


ニッコリと笑う翔が視界に入った途端に顔が火照りだす。

そして今更こんなタイミングで改めて考えてしまった。

今ここに集っている私たち4人は全員バスローブの下は裸なのでは…と。


「さあ!もう行こう神塚!これ以上2人の邪魔しちゃ悪いよ!」


「ちぇ〜。はいはい」


本気で残念そうな顔をして引っ張られていく昴を見ながら、だんだんと緊張感が蘇ってきた。


パタンと扉が閉まり、2人きりの空間になった途端にそれは爆発寸前になる。


翔によって、ピッとテレビが消され、静寂に包まれた。



ソファーに座ったまま深く深呼吸し、どうしていいのか分からずにバスローブの胸元を掴んだ。



「さて…煩いのはようやく消えてくれたし…

ねぇ、どっちのベッドがいい?」


「う…えっと…」


ベッドは2つあるのだが、1つは恐らく使わないだろう。


「ど、どっちでも。」


「じゃあこっち。」


そう言って窓際のベッドの前に立って手を差し伸べてきた。


ゆっくりとソファーから立ち上がり、その手の方へと歩みを進める。


あと40cm、20cm、10cm、…

手を伸ばしてその手を掴んだ瞬間、グッと引かれて腕の中に閉じ込められた。

厚い胸板に顔をつけ、柔らかいバスローブの感触が頬に伝わる。


震える手で背中に手を回すと、ギュッと力が入ったのがわかり体が熱くなる。

しかし、翔の体もとても熱いと思った。

自分と同じ石鹸の香りがしてその心地良さに目を瞑る。

ずっとこのままでもいいかもなんて思えてきてしまった。



「里桜、緊張してる?」


「当たりまえでしょ…」


「でも、私の方が緊張しているかもだよ。ほら…聞こえるだろ?」


そう言って後頭部を抑えられ、そのまま胸板に強く耳をつけると自分に負けないくらいにバクバクと波打っている鼓動が聞こえた。


「言っとくが、私だって緊張しているし…興奮もしてる…」


「ふ…嬉しい…」


素直にそう口にしてしまった。

翔は声を出さずに肩で笑いゆっくりと髪を撫でてくれた。


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