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結局、喧嘩の内容は2人からは聞き出せなかった。
でも仲直りはできたっぽいし、瞳も、こんなんフツーだからとか言っていたし、里桜はあまり気にしないことにした。
しかし、鬼頭の説教はかなり長かった。
まぁそれは当然のことで。
里桜も、割れたガラス窓の散乱した廊下や、あちこちの汚れた場所など、たくさん掃除を手伝った。
「ったくお前らは…まぁいい。俺も説教には疲れた。
今度の任務はお前ら2人に行ってもらう!」
鬼頭は翔と昴に強く言い放った。
しかし2人はあからさまにうんざりした顔をした。
「・・・なんだその態度は!」
「え〜これって罰の延長線?
もうせんせーのゲンコツくらったじゃぁん」
昴と翔は痛そうな顔をして頭をさすっている。
かなりわざとらしいが。
「違う!重要な任務だからお前ら2人なんだろうが!こーやってふざけてる場合ではない!そんなことでは気付かぬうちに命を落とすぞ」
「えっっ!!そんなに危険な任務なんですか?!」
たまらず里桜は声を上げてしまった。
「ハッハッハ!大丈夫だって〜
俺らが殺られるわけねぇじゃーん!
厳密に言やぁ、俺は!!!」
「なっ、私だって平気だ。
だから安心して里桜」
いつもの昴にいつもの翔。
確かに2人とも強いのは確かだけど……
でもそういう慢心が危険かもしれないよ?
そう心の中で呟く。
「なに、俺のこと信用してないわけぇ?」
心を見透かしたように昴が言う。
「俺らと言いなよ昴」
翔は若干イラついた表情で昴を睨んでから、すぐいつもの優しい表情で里桜に笑いかけた。
「心配しないで私の帰りを待っていて里桜」
「翔……」
「はは、そんな顔をしないでくれよ」
「でも……」
「大丈夫だから。ね?」
2人の様子をしれ〜と見つめている昴と鬼頭。
鬼頭の説明によると、簡単に言えばその任務は、近年魔術師と相反する動きをしている魔術師撲滅団体「エレファン」の取り締まりだった。
「エレファンて最近よく聞くあのっ」
「あぁ。里桜が転校してきた3年前あたりから存在が確認されている。そして実際、近年増えてきている特殊な魔物の半数近くはエレファンが絡んでいるのではないかとも言われている。」
根城は大方分かっているとのことだ。
里桜はひたすら不安だが、チラと2人を見ると、どちらもいつも通り自信満々の余裕そうな表情をしていた。
そして今日は里桜とクマも任務を任された。
みんなで昼食を食べてから各々出向くことになった。
「また泊まりがけなの…?それに伸びる可能性もあるなんて…そもそも殺人鬼集団だし、殺られてしまった魔術師も今まで何人かいるって聞いたし……」
里桜は考えれば考えるほど具合が悪くなるほどネガティブになっていた。
「里桜、本当に大丈夫だから。
それより君こそ気をつけてね。くれぐれも怪我とかしないように。まぁクマ助いるから大丈夫だとは思うけど」
「……うん……でも寂しいよ、それに、…」
「たった2日3日の話だよ。すぐ戻る。」
別れ際、呆れ顔の昴とクマを背に、いつまでもイチャイチャ別れを惜しんでいる。
「いつまでやってんだ、あいつら…過保護野郎共が。」
「だな、もー俺らで行っちゃうぅー?くまポン。」
「だがお前気をつけろよ。グラサン野郎。」
「えーなに?珍しく心配してくれてんのぉ?!」
クマはただ顔を険しくしている。
そんな珍しい表情と態度に昴は目を丸くする。
「もしかして象だかエレファントだかなんだか知らんけど、そんなのに俺らがやられるとか思ってるわけぇ?」
「違ぇよ。それだけじゃねぇ可能性が高いからに決まってんだろ。翔の言うように、お前は脳ミソ足りてねーんか?」
「……え?」
いくら翔の笑顔を見ても、里桜の神妙な面持ちは直らない。
2人で最強と言われている昴と翔コンビだからこそ直々に指名され、今回の大きな任務に駆り出された。
だとしても、危険な任務ということは分かっているのでやはり心配だ。
「気をつけてね?ホント…」
「ふ、私を誰だと思ってるんだ?大丈夫だよ。」
翔はいつもの笑顔で里桜の頭を撫でた。
里桜は眉を下げて少しだけ笑みを浮かべる。
なぜか今日はものすごく不安を感じてしまうのは何故だろう。
「本当は行く前に里桜を抱きたかったんだけど…」
耳元でそう囁かれ、こめかみにキスをされる。
それだけで一気に上気し鳥肌がたってしまった。
「…連絡…してね……」
ようやく発せた言葉は震えていた。
翔は返事の代わりに彼女の唇に優しくキスをする。
悩ましい笑顔の彼女を見つめた瞬間、
いい加減はよせい!というクマの声が後ろから聞こえた。




