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「わかってくれる人の所へ行くから。もーいい。」
「・・・」
「里桜のとこ行くわ。翔みたいにリアリストじゃねぇ俺らならきっと同類だ。だから、」
「だから?なんだ」
翔の眉間のシワが濃くなっていく。
鋭く冷徹になっていくその瞳を真顔で見つめ、何度か瞬きをしたあと昴は虚ろな目をして言った。
「だからさ、里桜を連れて、どこか遠くへ行くね。
俺も彼女も、当たり前の権利を当たり前に享受して、いつまでも幸福な人生を送ることのできるように…」
ガタッ
昴はそこまで言ってからハッとなって瞬時に立ち上がる。
座ったまま前かがみに俯いている翔から、禍々しい呪霊がぐるぐると漂ってきたからだ。
無意識かもしれない。
ゆっくり顔を上げた翔は冷酷さながらの瞳をカッと見開いていた。
「っ、じょーだんじょーだん!つーか、嘘!
ふははははははははっ」
「あ゛?」
翔がついに立ち上がった。
伸ばしてきた指先からは真っ黒い魔物がゆらゆらとこちらに向かってきている。
そしてもう片手で制服のボタンを開け始めた。
「えーっなになに、マジになっちゃって」
ゆっくりと歩いてくるのと同時に昴も後ろに下がっていく。
翔のその殺気の立ちようは人間とは思えないくらいに禍々しい。
制服のボタンを開け終えた翔は、髪を結っていた紐を取り去り、パサッと頭を振った。
それを見ていた昴もだんだんと不機嫌そうな顔つきに変わる。
「っは、毎回冗談通じない感じなんなの。
なんかムカついてきたわ、どっちがガキ?」
「黙らせてやるよ昴…!!!!」
そこから先はもうお互い止められなくなっていた。




