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「でも愛は違う。空虚でニヒルな心をどこまでも満たしてくれる。愛したり、愛されたりすることで、それだけで生きようって思えるんです。」
橙色の光に目を細める。
愛は、まるで太陽のようだとも思った。
直視するのは難しいけれど、ないと生きてはいけないもの。
「お金はなくなったら努力でどうにかできるけど、愛は1度なくしてしまったらなかなか元に戻らないし、努力でどうにかなるものでもないですよね。」
夕陽はあと残り3分の1くらいだ。
あと何秒だろうか?
「うん…そうかもしれない。
私も愛する者は決して手放したくないからね。」
そう言って理玖は羽実の方を見る。
なにやらクマとお喋りをしているようだ。
優しい目をしてそちらを見つめる理玖を見ながら、里桜は問いかけた。
「ある程度の所までは、所有が人を自由にも独立的にも豊かにもしますけど、行き過ぎると所有が主人になって、いつのまにか所有者が所有される側になっている気がしませんか?」
ハッとしたように理玖が視線を戻す。
里桜はもう既に前を向いている。
夕陽が今にも沈みそうになっているからだった。
だんだん薄暗くなってくるのがわかる。
「あっ…すみません。喋りすぎちゃいました」
里桜は気が付いたように眉を下げだした。
「ふふ、いいんだよ。私はもっと里桜ちゃんの話が聞きたい。」
そんな君だから大好きなんだよ私は。
そんな君を悲しませるような輩がいたら、私は…
そう思いながら理玖は微笑む。
里桜は照れたようにまた、残り僅かの夕陽を見つめた。
「でも……思うんです。
お金に飢えるのと愛に飢えるの、どっちが辛いんでしょうね。」
ついに、夕陽が沈んでしまった。
辺りが少しだけ暗くなり、それとともに辺りの音も静寂になっていた。




