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「にしても……今日、

私はちょっと妬いてしまったよ、里桜ちゃん」


「んぐっ?はい…?」


突然、理玖に意味深なことを言われ、変な音を鳴らして肉を飲み込んでしまった。


「姉様を妬かせるとは、

なかなか罪深い人ですね、里桜さん」


「は、はぁすみません…ていうか、何の話ですか?」



ムスッとしている羽実の隣で、理玖が艶めかしい笑みを浮かべて言った。


「随分と天馬くんにご執心なんだなぁと思ってね…

でもまぁ、分かるよ…。私も、彼のことは神塚君よりも買っているから。」



「え、あ……そうなんですか…?」


翔とベタベタしすぎていたかな?

それともキスを見られてた?!


たちまち顔を赤らめる里桜。



「ニヒルな笑みもミステリアスでいいと思うよ…ほら…」


そう言って理玖は里桜の顎を優しくつかみ、キュッと方向を変えた。

その瞬間に、向こうにいる翔と目が合ってしまった。

彼は気がついたようにフッといつもの優しい笑みを浮かべた。


あれが…ニヒルな笑みってやつ?


私には最上この上ない大好きな笑顔なのだけど。

いつも目を無くして笑う彼は、空虚ともミステリアスとも違って、私にとっては神様みたいに天使みたいに、ただ暖かく感じる。


数秒見つめ合ってしまい、

恥ずかしくなって急いで視線を逸らした。


本当はもっともっと見ていたかったけど。



「でもね、私はたまに思うんだよ。愛は価値のあるものなのかってね」


「え?」


「私はね、昔から、

金に換えられないものには価値を感じないのさ。

物質的な価値に変えることのできないものにはね。」



何の気なしに言っているようなその声色が、逆に里桜の口を開かせた。



「確かに、お金は大切だとは思います。でも人って、愛がなければ心が荒んでいくし、誰かを愛し、誰かに愛されていなければ、生きている実感がわかないと思うんです。昔の私みたいに…」


そう言って遠くの方に視線を送る。

夕陽がゆっくりと沈んでいくのが見えた。


「高校に来る前の私は、本当になんにも持っていなかった。もちろんお金も愛もです。どちらも持っていなかったからこそ、今になって言えることがあるんです。」



「うん?」


理玖は里桜の瞳をジッと見つめた。

彼女のまつ毛が小さく揺れ、一瞬だけチラリと翔の方を見たのが分かった。



「本物の愛は、お金では買えません。

それに愛は、与えるものなんです。」



ゆらゆらと揺れる橙色の光が、大きなその目に映し出されているのを見て息を飲む。

彼女はとても美しいと理玖は思った。



「富は海水のようだとも思うんです。飲めば飲むほどに、渇きを覚える…私は今日、泳ぎの練習で結構 海水飲んじゃいましたっ。」


そう言って思い出したように里桜は笑った。

いつのまにか、夕陽が半分になっている。



「…そうだね…1度溺れるとなかなか出ては来られないよね…」



理玖は小さく呟き、里桜と同じ方向に目を向けた。

夕陽も、海に溺れていくように見える。



「すごく喉が乾きましたよ。でもそこでまた海水を飲んでしまえば、もっともっと喉が乾いてもっともっと飲みたくなって…それを繰り返しても喉は潤わないんです。いつまでも…ただもっと、欲しくなるだけ…」



理玖の見開いた目にも、玲瓏な橙色が揺れだした。

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