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「見てみたいな。里桜が泣いているところ。」
呟くように翔が言った。
「なら約束してくれ。その涙は必ずお前が拭くと。」
「約束なんてしなくてもそんなの」
「いいから約束しろ」
強くそう言う親友を、翔はサングラスをずらして見つめた。
真剣な目だけがこちらを見ているのがわかり、目を細める。
"人間は約束が好きだろ"
クマの言葉が脳裏に反芻された。
"約束してくれ。里桜には悲し涙は流させないって"
ホテルでしたクマとの約束。
そして今ここで昴との約束を交わし、
両方の約束を守るのだとしたら、
自分は悲し涙以外の涙を拭くことになるのだろうか?
それとも、どちらかの約束は破ることになるのだろうか?
はたまたどちらも破ることに……
いや、それだけはないだろう。
両方守ってみせよう。
「わかった。約束するよ…」
親友2人が初めて交わした約束だった。




