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名古屋観光を終えて、今夜泊まるホテルに到着したのだが、それが予想外すぎて驚愕した。
ホテルのことは昴に任せっきりだったのだが、星いくつか付いているらしい豪華で立派な所を選ぶとはさすがというか、なんというか…
「あー、鬼頭康広の名前で2部屋で予約したんだけどさぁ、3部屋に増やせるー?」
理玖と夢子も急遽泊まることになったのはいいが、不良のような若僧に馴れ馴れしくタメ口を使われているフロントの人の心中を察するとなんだか可哀想だ。
しかし、やはり星のついたホテルと言うべきか、ホテルマンは顔色一つ変えずに丁寧に対応してくれて、豪華な部屋に案内してくれた。
組み合わせはもちろん、
昴と翔、瞳と里桜、理玖と夢子
だと思っていた。
「おいおいおいおい、違うだろ里桜!
はい、そっち。んで俺がこっち。」
「はぁあ?!」
瞳と部屋に入ろうとしていたら突然背中を押されて隣の部屋の前に立たされた。
すなわちそれは、翔と同じ部屋ということだ。
「な、な、え?!瞳はどうなるの?!」
「そりゃ俺と同室だろ。」
「ダメだよそんなの!ねぇ瞳!」
しかし瞳は満更でもない様子で笑っている。
「私は別にいいよ?まさかこいつと私の間に何か起きるとでも思ってんの?」
「そうだよ。俺がタイプでもねぇ女に手を出すわけがないだろ」
その言葉はなんだか失礼極まりないのだが、瞳は私だって!と言いながらもそそくさと部屋に入っていってしまった。
唖然としたまま誰もいなくなった廊下で固まっていると、翔に腕を引かれた。
「ほら、入るよ」
「っえ。いいのかな…」
「あいつらの心配より自分の心配をしたら?」
声を出す暇もなく部屋に押し込まれた。
かと思えば瞬時に抱きすくめられ、持っていた荷物を落とす。
初めての翔との抱擁にさすがに鼓動が早くなっていく。
おずおずと背中に手を回すと、翔の腕の力も強くなった。
「…天馬く…っじゃなくて…翔…」
「…くく…おい…」
体を離されたかと思えば、グッと顎を掴まれ、目と鼻の先で真剣に見つめられる。
「さっきはあんなに何度も昴のことを呼んでいたのに、私のことはまだ間違えちゃうのか?」
昴と連呼したあの時は焦っていて明らかに無意識だった。
しかし、無意識で自然だったからこそ、翔の機嫌を損ねてしまっていたようだ。
あの時は冷静だったのに、2人きりになった途端こうだから少し意外でもあり嬉しかった。
「ふ…ごめん…」
「何笑ってる」
「なんか…嬉しくて…」
「は?」
瞬時に噛み付くようなキスが降ってきた。
柔らかい舌が唇を割って滑り込んできて思わずビクッと怯む。
それに気づいたかのように翔が腰を引き寄せた。
密着した体から一気に熱が放出されたのが分かる。
戸惑いながらも舌を出すと、すかさず奥から吸い上げられ、絡まり合った。
後頭部を押さえつけられ、さらに奥へと侵入してきた舌が口内を艶めかしく蹂躙していく。
初めての感覚に初めての快感。
なんとも言えないとろけるような口付けが、角度を変えて何度も交わされた。
ついに酸素が足りなくなって息が苦しくなり顔を背けてしまった。
息を荒らげながら恐る恐る前を見ると、厭らしく唇の濡れた翔が薄らと笑っていてドキリとなる。
「…ふ…里桜…またそんな顔して」
「だからそれ言われても…わかんないし…」
誤魔化すように目を逸らすが、明らかに赤く火照っている頬をスっと指で撫でられる。
悩ましげに眉を寄せた色気のある表情をされ、全身の血流が早くなるのがわかり目眩すらも引き起こしそうになる。
「…これ以上を期待しているみたいな顔だけど。」
「んっ…」
軽く啄むようなキスをしただけで小刻みに震えているのがわかり翔は頭を撫でてから体を離した。
「冗談。なんにもしないよ」
そう言ってカーテンを開けようと振り返った瞬間、後ろから里桜にしがみつかれた。
目を見開いて口を開きかけた時、蚊の鳴くような声が聞こえる。
「もう1つ誕生日プレゼントが欲しい…」
「…うん?なに?」
「私の初めてに…付き合って…」
相当勇気を出して言ったであろうその言葉は震えていて、胸が締め付けられる思いがした。
眉をひそめて俯く。
そのままの体勢でしばしの沈黙が流れた。
「…だめ…かな……」
消え入りそうなその声に、昴は意を決したように強く返した。
「ダメじゃない。ただ…後悔しても知らないぞ」
「するわけない。どうしてそんなこと言うの…」
翔は振り返ってその震える身体を抱きしめ、背中を摩った。
「私が後悔してしまいそうなんだよ。君のことを…傷つけてしまいそうな気がするんだ。」
その声は、今まで聞いたことがないくらいに弱々しかった。




