……もうなんか準決勝
「うおー、【終焉まで続く加速】」
「【フィルキー・フィランセルフ】」
「終焉(略)!」
「【踪碑饗宴纏乱演武】」
「……(略)」
「【FEELING DRIVE】」
その後も、何だかんだで勝ちまくった。
……もう何回勝ったか分かんないくらい勝った。
「【RAILGAN】!」
「〈紅蓮拳〉!」
両足、左腕、脇腹その他諸々吹っ飛んで、HPはギリギリだったが、それでも3回目のアンペルとの戦いに打ち勝った。
「チッ、また負けたカ」
「お前は永遠に俺に勝てない運命なんだよ」
「嘘つけ結構ギリギリだったロ」
うん、マジであとHP3くらいしか残ってなかったし、レベルが1でも低かったらやられてたと思う。
「私の分まで頑張ってくれヨ」
「ああ……あと何回勝てばいいんだ?」
「知らなかったのか……もうベスト4だゾ」
「え、マジ?」
真偽を確かめようと、対戦表を広げようとしたが……横から手を出したアンペルが、それを閉じた。
「なにすんだ!?」
「いや、面白いことになりそうだかラ。どうせ能力までは分からないんだし、絶対に見るなヨ!」
……そう言った彼女の顔は、悪戯っぽく笑っていた。
◇
面白いことになるというアンペルに従って、対戦表は見ずに、準決勝の会場へと向かった。
相手は……青い髪の爽やかイケメン。
イケメンならキャラメイクでどうにでもなるのだが、その爽やかでどこか余裕がある雰囲気は、リアルでもそうなんだろう。
『そろそろ始めるよ~』
「絶対勝つ(ドン)!」
「凄い意気込みだね……」
俺の意気込みに、彼は若干困り顔になりつつも、微笑は崩さない。
もうその反応がイケメンなんだよ……俺まだ彼女居ない歴=年齢だぞ。
『よーい、ドン!』
「【最高位海神】」
彼は、背負っていた槍を振り上げ、地面に叩きつけた。
瞬間、穏やかだった辺りの水は荒れ狂い、決闘場の地面は割れ、天変地異が起こった。
水流のせいで上手く泳げないが、
「【終焉まで続く加速】」
必殺技を発動させて、暴れまわる水流から脱出した。
相手の様子はというと、持っていた槍がトライデントとなり、光り輝いていた。
それを振りかぶって、ゆっくりと素振り。
「〈Τρίαινα εδάφους〉」
ザザザザ!
良く分からない言語が発された後、決闘場の大地が変貌して、土製の槍が俺の辺り一帯に生えてくる。
「うわ!」
臓器や四肢は無事だが、体に無数の傷ができる。
なるべく地面から離れようと、上の方に避け……謎の勘が働いて、一瞬右にズレた。
さっきまで俺がいた空間を、天井から土製の槍で貫く。
天井もあるのか。
このままだと、俺のライフが持たないため、さっさと決着をつけたい。
まだ土槍がない空間で、新たに生えてくるのを左手で打ち破りながら、摩擦熱をチャージしていく。
ワンパンすんぞ!
十分チャージされてから、いきなり一直線に相手に近づいていき、
「〈紅蓮拳〉」
地面で閉ざされてしまいそうな狭い空間をくぐり抜けて、いつものを繰り出したが、相手はまたゆっくりとトライデントを振り、
「〈Χωμάτινο τοίχωμα〉」
土の厚い壁が出現し、全力の拳は防がれてしまった。
……これは、思ったよりヤバいぞ。
既にHPは半分を下回っているし、もう決闘場はほとんど土槍で満たされていて、現代アートの様な風景になっている。
もう一度チャージできるか分からないし、できたとしてももう一度防がれるといよいよ終わりだ。
……その時、俺の頭に一つの可能性が降りてきた。
勝ち筋はこれしかない。
「終焉」
いつもの様に一発当てて離脱するのではなく、常時加速状態を解いて、相手の寸前に残った。
俺の【終焉まで続く加速】は、1日1回という制約はあるが、止まることはできる。
「【リーフィーシードラゴン】〈木錬成〉木刀」
「な!?」
スキルを切り替えて、木刀を作り出した。
さっきから、地槍を出す時に、時々トライデントを素振りするのは見ていたが、ゆっくりとしか動いていない。
もしかしたら、あのトライデントはゆっくりとしか動かせないのでは?
ドッ!
振られるトライデントを、刃じゃない部分で受け止め、接近戦に慣れていなそうな相手の脛に蹴りを入れる。
なんとか振って、地面の槍を使おうとしているが、こっちも自然魔法でそれを止める。
「〈花舞〉」
鋭い花びらが巻き起こり、相手に刺さっていく。
あとはゴリ押すのみ。
「〈土縛り〉」
ようやく少し落ち着いたのか、トライデントを用いなくても使える規模の小さい魔法で俺の足を縛り、距離を取ったが、
「ラア!」
油断している所に、木刀を鋭利にしつつ、長く伸ばして斬りつけ、倒した。
……俺、決勝進出じゃん。
【ポセイドン】
ギリシャ神話の海神。
技名はギリシャ語になってます。