第4回戦
次、4回戦。
少しだけ時間が空くので、《海馬組》のメンバーと連絡を取ると……ガンツ、シェンラさん、ギコーの3人がやられてた。
ちなみに最下位はギコー。俺みたいな素早くなる系の奴と当たって、ノコギリを当てられなかったらしい。
これで最下位は免れた訳だが……まあ、行けるところまで行こう。
負ける意味もないしな。
と、いうことで、俺はまた決闘場に立つ。
お相手さんは……また陰キャっぽい、全身黒の黒ずくめ男だった。
『そろそろ始めるよー』
いつものザ・フィッシュが出現した。
話しかけんなオーラを感じるが、一応挨拶してみる。
「よろしくお願いします」
「……よろしく」
声のトーン的に、女性だった。黒い影のせいで、顔は見えない。
角度を変えて、顔が見えるかなっと検証してみたが、シルエットしか分からないまま、ザ・フィッシュが腕を振り上げる。
『よーい、ドン!』
「【終焉まで続く加速】」
「【WHITE・DEATH】」
どうやら、相手もそこそこ決闘に慣れているらしい。
陰キャっぽいから、面倒な必殺技を発動させられる前に、さっさと終わらせようとしたが、相手も開始と同時に必殺技を使った。
彼女は、白い光に包まれて……白い死神となった。
顔や袖の辺りは漆黒に包まれているが、それ以外のローブ、少しだけ見える腕、そして大鎌は真逆の純白。
ひとまず突っ込んで、チャージ無しのただのパンチを繰り出した所、
ガチャン! ギリギリ
純白の大鎌で防がれた。金属と金属が擦れ合う音がする。
右腕だけ置いて、他の部位を先に動かすことで即死判定を回避していたが、これ以上は右腕が千切れるので、左側を通り抜ける。
そして、振り向くと……相手の姿が見えない。
「またかよ」
3回戦と同じ手口を疑って、HPを確認したが、特に減っていない。
死神みたいな相手だから、透明化でもしているのかと、拳を前に出して、決闘場全域を周ってみる。
しかし、拳が何かに当たった感触はせず、俺のHPが減っている様子もない。
「うーん? 透明化じゃあなsッツ!」
ボーっと泳ぎ続け、思考の方に集中していると……俺の進行方向に、いきなり白い死神が現れた。
白いローブが光を反射して輝き、その分漆黒の顔がより際立って不気味に見える。
俺から垂直に、遮断機の様に鎌を振り上げた。
ボーっとしていた分、反応は遅れたが、勢いを落としつつ熱をチャージし、
「〈煌めく死〉」
「〈紅蓮拳〉」
振り降ろされた白く輝く鎌を、少しだけチャージした拳で迎え撃つ。
ザシュ!
「ッグ!」
必死で対抗するもこっちの拳が押し負けて、中指に赤い筋ができた。
これ以上打ち合っていると、こっちの腕が真っ二つになりそうなので、駆け抜けようとしたが、
「DEATH!」
「チッ」
鎌が左足に入り、恐らくアキレス腱がブッチした。
一気にHPが減っていくが、俺の加速なら足は関係なく泳げるので、動き的な問題はない。
では、何が問題かというと、
「またかよ」
死神は影も形も鎌もなかった。
まだこの姿を消すギミックが解けていないのが、一番の問題だ。
クソッ、現れる所を見ておけば良かった。
「……もう一回出てきた所を見るしかないか」
あたりを見回しながら、某アンパンのヒーローみたいに、両手を前に出して床と平行になる様に泳ぐ。
スピードを落としてチャージしたら押し勝てるかもしれないが、それだと知らない内に首が飛んでいそうなので、高速で移動し続けなければならない。
「っと、来た」
また俺と垂直に、白い死神の純白の鎌が振り上げられる。
「気張れよ熊魚ぁ!」
「〈煌めく死〉」
[緩熱摩 リベア]をフル活用して、ギロチンの様に降ろされた鎌の寸前で急停止し、
「〈紅蓮拳〉」
バアン!
ほぼ最高火力のリベアで、思いっ切り鎌を殴りつけた。
鱗器だったからか、へし折ることは出来なかったが、道を切り開くことはできた。
二度とこんな手は使えないだろうが、もう使わないからいいや。
「みぃつけたぁ!」
決闘場にチマチマと入り込んでいる太陽光の中に、光が強い部分がある。
影に潜り込む能力はたまに聞くが、こいつは光に潜り込む能力だ。
まあ、真っ白な死神っていう時点で気付いとくべきだった。
表情も姿も見えないが、必死に逃げていそうな相手に追いついて、光の強い所を殴りつけようとすると……光から鎌がでてきて受け止めた。
「DEATH」
「もう通じねえぞ」
止まらずに通り抜けて、後から振り返ってみると、もう死神は光に潜っていなかった。
真正面から決着を着けようって訳か……嫌いじゃない。
できるだけ摩擦熱をチャージし、真向から突っ込む。
「いっくぜぇぇぇ!」
「ですデスDEATHです~!」
鎌が横薙ぎに振られる前に、急停止。
最大まで溜められた熱を右手に止め、
「〈瞬転〉」
あと少しの距離を短距離ワープで詰め、
「〈紅蓮拳・フルバースト〉ォ!」
「……DEATH」
顔に全力の紅蓮顕を入れ、勝った。
【ホホジロザメ】
ジョーズでおなじみ、ホホジロザメ。
異名、白い死神。