VS海胆
第四回イベントが始まった。
内容は、事前予告通り、万全の状態から始まる1on1の決闘。
今回はクラン戦ではないが、なんとなく落ち着くので、いつものメンバーで集まる。
「じゃあ、一番順位が低かった人が、順位が高かった人に、何でも好きに命令できるってことデ」
「……ダーリン、真っ先に負けていいよ」
「やだよ」
「まあ、頑張りましょう」
決起集会をして解散し、それぞれ第一回戦の会場に向かった。
特にしたい命令はないが……ミワとシェンラさんの命令には命の危険すら感じるので、出来るだけ勝っといたほうが良いだろう。
ちなみに、シェンラさんは攻撃手段がなさすぎるので、相手を毒にする鱗器を作って、珊瑚で耐久ゲーするらしい。
……俺がクラン内で二番目に戦いたくない人になった。一番はどう考えてもRex。
◇
一回戦の会場に入ると、お相手さんも入って来た。
ちょっと暗そうな男って感じ。
気まずいながらも、話すこともないので、戦術の振り返りを脳内でしていると……
『待たせたね。はっじまるよー』
決闘場の中心に、ザ・フィッシュが現れた。
開始の宣言をするのは、やっぱりこいつらしい。
『よーい、ドン』
「【終焉まで続く加速】」
とりあえず、開始と同時に必殺技を発動し、加速した。
初手から突っ込むのも普通にアリだが……一回負けたら終わりな以上、慎重にいきたいので、相手と距離をとりつつ、様子を観察する。
相手は開始位置から動かず……加速して動き回る俺を、ジッと見据えている。
カウンター型かもっとトリッキーな型か……いずれにしても、自発的にな奴ではなさそうだし、こっちから動くか。
直線で突っ込み、
「〈溜摩熱〉」
[緩熱摩 リベア]を使って、ある程度スピードを落として調整しつつ、攻撃力を上げ、
「オラァ!」
熱い拳で相手の腹を殴ろうとした瞬間。
「【|海胆咲き棘峠《ウニザキトゲトウゲ】」
「いた!」
バッ!
相手から、細長い糸……いや、針か。
ハリネズミのような黒い針が、全身から生えていて、俺の拳に無数の穴を開けた。
無駄にリアリティがある攻撃なため、見ているだけで痛い。
「ッツ!」
とにかく、止まっちゃあいけない! 思考停止して、止まったら即死する!
精神ダメージを耐えて、進むのをやめず、相手の左側を通り抜けた。
一旦距離を取って、壁に当たらないように気を付けながら、損害を確認する。
右手に数十の穴が空き、血まみれになっていた。
痛々しいそれを、スーツを破って止血し、HPを確認すると……7割から、少しずつ減っている。
毒状態か。
次に、相手の状態を確認すると……もう振り切って、土下座の様な体勢で、おもいっきり針をアピールしている。
……もうあんなん殴りたくない。
けど、このままだとこっちが毒で死ぬし……ねぇ。
……せめてワンパンするか。
どうせ反撃は来ないので、スピードを下げて、右腕に帯びる熱を上げていく。
相手にもその熱が伝わったのか、土下座体勢を止め、
「〈ニードルガトリング〉」
無数の針を飛ばしてきた。
数本刺さるが、そこまで大きなダメージにはならない。
少し回避運動をとるだけに止めて、熱をチャージし続ける。
「そろそろか……行くぞ」
熱を保持したまま、もう一度相手の方に突っ込み、右腕を振りかぶった。
「〈紅蓮拳〉」
棘ごと燃やしなが、相手を殴りつけ……倒した。
第一回戦突破
【ウニ】
普通にウニの針。漢字は海栗とも書く。
毒は鱗器の力。
1VS1をしていると、どうしても1話1話が短くなるんだけど……2回くらい一気にまとめるのと、今回みたいに短いのを1回1回やるの、どっちがいいですか?