Railgan
『第四回イベント、開催』
……もうそんな時期かぁ。
文化祭のせいで、なんか時間が短く感じたよ。
さて、今回のイベントは、久しぶりにクラン戦ではなく、個人戦のタイマン大会らしい。
結構タイマンに強い構成にはなっているが、マドカの【顕幻・ヒュドラ】や、前の学校などの、高耐久の奴がキツイ。
削りきる前に集中力が切れ、相手に突撃して止まりそう。
「となると、これかな?」
俺は[八九三 キャスィーツ]に目を落とした。
必殺技環境に変わったせいで、ちょっと耐久が上がった程度でほとんど状況は変わらない。
[特能ウロコ]は余ってるし、火力が上がる鱗器が欲しい。
「……お前、やれんのか?」
次は右手の[熊魚の返り血]に視線を移す。
火力を上げるなら、武器を鱗器にするのが一番だろう。
「よし、強くなれよ!」
2つの[特能ウロコ]とリベアが眩い光を放ち……光が消えた時に残ったのは、紅のメリケンサックだけだった。
「さて、能力は……」
そのメリケンサックを嵌め、能力を確認する。
[緩熱摩 リベア]
・スピードを落として摩擦熱を溜め、攻撃力を上げる
要するに、加速中にスピードを落とせて、火力が上げられると。
試しに普通の加速でやってみたが、右手が赤くなり、攻撃力が上がった感覚がした。
……ちょっと実験してみたいな。
皆が集まっているハズのリビングに行って、
「なあ、誰か決闘しようぜ」
実験台……もとい決闘相手を探す。
「はいはい、私やる」
「いや、ミワは……ちょっと相性悪過ぎて、相手にならん」
止まれなくて1発しか殴れない状態でも、デコイを消すには十分だし、実体アリでも加速中ならどうにでもなるし……。
個人的にはラチックの必殺技を見てみたいんだが、不運にも今日は不在だ。
あとまだ必殺技を見たこと無いのは……。
「アンペル、Rex、どうだ?」
「おー、面白そうだナ」
「熱い決闘を期待してるアル」
と、いうことで、アンペルとRexが、相手をしてくれることになった。
◇
ルネ肆アの決闘場に赴き、スタンダード決闘場を一つ借りる。
「誰から行く?」
「……ジャンケンポン!」
「……そういえば、お前とやるのは久しぶりだナ」
「時間が経っても結果は変わらない」
VS アンペル。
後衛型のアンペルに合わせて、決闘場を隔てる結界のギリギリに位置取り、逆にアンペルはギリギリまで下がった。
「熱い決闘を期待してるぜ。デュエル開始ィィィ!」
開始と同時に、アンペルは一つの銀弾を取り出した。
「ちょっと待て、それはヤバい!いろんな意味で!」
右手の人差し指と中指でそれを挟み……彼女の周りを、黄色い稲妻が迸る。
「【RAILGAN】」
普通の加速を使って、弾丸が発射される寸前に伏せ……さっきまで顔があった場所を、眩い光が通過する。
その速度は、音速の三倍。発射直前に躱さないと死ぬ。
「ギコーと同じ様な、一撃必殺型か?」
「いやぁ、アレよりは連射力あるゾ」
次は2発の銀弾を取り出し、今度は両手で発射準備をする。
「じゃあ、そろそろ俺も行くぞ。【終焉まで続く加速】」
「【RAILGAN】」
必殺技を使用して、永続的に加速する。
アンペルを中心とした円周回運動で、レールガンを躱すのを優先していく。
右にズレた瞬間に左耳にレールガンの音が入り、 [緩熱摩 リベア]で遅くなった瞬間に、眼前に光が刺さった。
気を抜いたら一瞬で死ぬし、気を抜かなくてもアンペルの狙いと勘が良かったら死ぬ。
「これなんて弾幕ゲーだよ!?」
ドンドン周りに光が刺さり……左腕が二の腕から吹っ飛んだ。
キャスィーツがなくてもある程度の耐久は確保してあるが、それでもHPの4割は消し飛んぶ。
これは、さっさと決着を付けねえと。
今では両手合わせて八つの銀弾を撃つようになって来たが、逆に弾調は適当になってきている。
一気に8発撃って、装填までに時間が掛かる……今!
円周回運動から、直線でアンペルの方に突っ込む路線に切り替え、直接殴りに行く。
……この光景、なんか既視感があるな。
そんなことを考えて……目の前の光景に、肝を冷やした。
アンペルは、彼女の鱗器である[電走駆 エレクトリックBIKE]を二本の腕に乗せ、
「【RAILGAN】」
バイクを、打ち出した。
銀弾とは体積が段違いで、躱しきれない。
……まさかバイクが打ち出されるとは思ってなかったが、策はある。
「〈瞬転〉」
バイクが発射される瞬間、前方に短距離ワープし……尾を引く光に飲まれた。
どうやら、成功したみたいだ。
「〈溜摩熱〉」
新しい力を使って、減速しつつ火力を上げ、
「な、結果は変わらない」
熱い拳で、殴り飛ばした。
「あー、行ける気がしたのニ」
「狙いが適当過ぎるんだよ」
「いや、あれ照準合わせんの結構難しいんだっテ」
まあ、俺とアンペルだとレールガンが当たるかの運ゲーになるって感じかな?
簡単に振り返ってると、Rexが入って来た。
「良かったぞ。最後の拳が熱かった」
「ありがとよ。すぐお前にも食らわせてやるぜ」
VS Rex
位置について、決闘の用意をする。
まだあいつの必殺技を知らなんだが……
「もう、何となくもう察してるんだよな」
「……いや、度肝抜くから」
「やるゾー。デュエル開始ィィィ」
「【顕幻・イクチ】」
「知ってた」
マドカの時みたいに光に飲まれ、その光が増大していき……細長くなる。
最終的に出てきたのは、全長の見えない巨大なヘビの様な妖怪、イクチだった。
「苦手な方だけど……こういうのの為に新しく鱗器を作ったんだぜ!【終焉まで続く加速】」
小回りの効かなそうなイクチに、ハエみたいにウザい泳ぎ方でかき乱し、
「うおー〈溜摩熱〉」
ドカドカドカーン!
……辺りが油で満たされていたらしく、自分の出した熱で爆散してしまった。
しかも、爆発で後ろ方向に吹っ飛ばされ……動いてない判定で死んだ。
その後行ったアンペルVS Rexでは、鈍重なイクチの頭をレールガンが貫き、一瞬で決着がついた。
やっぱジャンケンゲーミングなんやなって。
【終焉まで続く加速】の即死判定は、本家マグロと同じように、進まなかった時です。
後ろに吹っ飛んでたら死ぬ。