検証回だから面白くないけど見放さないで!
素手は無理と言われたので、いつもの武器屋でナイフを買って(まけてくれた)、初心者用狩場に連れていく。
いつもの犬魚が二人を出迎える。
ガンツがナイフを振って……死んだ。
「なにやってんの?」
「反作用で死んだ」
たぶん真面目にやってここで死んだのってお前が初めてだぞ。
一方、ファニーの方は順調に犬魚を討伐している。
あっちは生き返った後が弱くなるから、その前はただのスキル無しだ。
……あれ、こいつらやばくね?
死ななければスキルなしで、片方はすぐ死ぬから戦闘しにくく、もう片方は一回ならまだ対抗できるかもしれないけど、たぶん、二回以上死んだら生き返ってもステータス差でゴリ押される。
本人たちも気づいたようだ。
「イグノ、DAOでも、戦略を考えるのはお前の役割だったよな」
お前の役割はリトマス試験紙だったけど。
あと、お前用に考えてた訳じゃない。強そうな構成を発表して、それをこいつが採用してただけだ。
順調にレベルを上げてたファニーもこっちを見て、
「よろしくね♡(ウィンク)」
ガンツがまた死にました。
多分心拍数が一定回数を超えると死んでるのかな?
「はぁ。まあ、お前らがレベル上がるまで暇だしなぁ。引き受けた」
まだ尖った性能があるだけやりようがあるだろ。
まずは、ガンツの使える武器を探さないと。
というわけで、いつもの武器屋さんで、さまざまな種類の武器を使わせてみる。
「剣」
「反作用で死んだ」
「槍」
「反作用」
「銃」
「反動」
うわぁ、マジでなんでも死ぬ。
これ最早ダンジョンの斥候として使うしかないんじゃないか?
それでもまったく攻撃が出来ないのは……というか、多分防御力と素早さのステータスがかけ離れてると、走っただけで死にそう。
歩きながら熟考していると……ガンツが一つの武器を持ってやってきた。
「これなら死ななかった」
もっているのは……刀?
何故か分からないけど、刀なら死なないのか?
「よし、それなら幾らでもやりようは……」
「すまん、もう10回死んでるだけだった」
終わった。
3分後にもう一度使ったら、しっかり死んだ。
あと残っているのは……
「弓かぁ」
いや、引いただけで死ぬだろ。
「いや、なんかいける気がする」
お前それ刀の時も言ってたぞ。
うーん、一回攻撃するごとに死ぬのか……それに、剣とかは力を込められないから、やるとしても銃とかかなぁ。
諦めかけたその時……矢が俺の目の前を通り過ぎた。
「ストック数は?」
「22、まだ死ねるはずだ」
どういう原理だよ。
とにかく、弓なら死なずに使えるらしい。
次にファニーの方だが……こっちはすぐに決まった。
スキルの検証をしていると、あることに気づいた。
死んでも、魔力は減っていない。
例えば、死ぬ前MPの最大量が100で、残っているMPが70だとして、一回死ぬとステータスが下がり、最大量は80まで減ったが……残りも80まで回復している。つまり、魔法ならただのMP回復にできる。
「できました」
UAO内のカフェにて、二人に戦術を伝える(俺は歩き回ってる)。
「まずはガンツ。大体分かってると思うが、弓の遠距離アタッカーだ」
正直、こいつに関してはこれしかない。
だってダメージ与える手段がこれだけだし、壁にもならないし、こいつ回復役ヘタクソだし。
初心者の時敵が妙に硬いと思ったら、こいつが回復させてたんだよなぁ。
「でも、それだとスキルが活かせてないんじゃないか?」
少し焦った様な、ガンツからの反論。
だが、全く動じていない俺は……一つの丸いものを取り出した。
それは……爆弾。
「命がいくつもあるってことは、何回も自爆特攻できるってことだよな?」
「あー。なるほどな」
要するに、この爆弾のおかげで、こいつは遠距離アタッカーだけど、近づいたら爆弾で一方的に吹っ飛ばし、自分は生き残れる。
さらに、ストックが十分にあれば時間稼ぎも可能という、なかなか強そうなできに仕上がった。
問題は遠距離合戦だが……まあ、全部対応なんて無理だ。
こっちもストックでいい勝負はできるかもしれないけど、遠距離スキルを持ってこられるとキツイかもしれない。
「てことで、ステータスは攻撃力重視で、自壊警戒の防御力もひとつまみ、HPはなくていい。もう1とかでいいんじゃね?」
「HP1ってヌ〇ニンか。大体分かった、ありがとよ」
「ねえ、私は?」
ずっと楽しそうに聞いていたファニーが、目を輝かせている。
「って言っても、唯一死亡制限がかからないMPを使った魔法アタッカーしかないと思う」
「そっかぁ」
輝いていた目が一転、ちょっとがっかりした感じだ。
しかし、これで終わりではない。
「ただし、それだとスキルが活かせてない。遠距離型ってあんまり死ない割に、接近されたら一瞬で死ぬから、生き返りを活かそうとすると、接近戦を仕掛けた方がいい。ガンツは例外」
「え?じゃあどうしたらいいの?」
「近接魔法アタッカー。MPを消費してステータスを上げる方法があるから、それを使え。多分、ステータス制限はかからない。この手のやつはMP不足が問題になるけど、死亡回復でどうにかなるだろ」
つまり、生き返る魔法アタッカー。
こちらもやはり、自滅特攻をしても生き返れることが長所になる。
なにより前衛が俺一人だと寂しい。
「やったー、強そう。じゃあ、明日からも3人でがんばろー!」
「あ、ごめん明日無理だわ」
またファニーが絶望的な表情を浮かべた。
表情豊かですね。
「ちょっと用事がある」
「女と会って来る」
「は?」
おいガンツ、合ってるけど余計なこと言うな、勘違いされんだろ。
ほら、絶望から怒りに変わったよ。
その時、軽く髪を整えていたガンツが、キリっとして、
「大丈夫、俺はいるから」
「明日は一人かー」
……ドンマイ東間。
運営社員「さすがにマンボウ使いにくくないですか?」
上司 「そうだな、一つくらい使える武器を用意するか」
社員 「何にします?」
上司 「マンボウに形が似てるし弓でよくねwww?」
社員 「そうっすねwww」
次回は現実回です