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Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
第四章 超インフレ編
82/110

メンヘラ一家

 一週間がんばったテストの結果は散々でした。

 「もう少しできると思ってた」を30分くらいかけてネチネチ語ったハゲの先生に殺意が沸いたね。

 ピピピピ、ピピピピガン(目覚ましを叩いて止める音)


「ふぁー。眠い」


 昨日の打ち上げが長引いて、月曜なのに頭がポワーっとしているのだが、無理やり起き上がって……


「あれ?」


 食卓には何もなかった。

 伊織が家に来てからは、彼女たっての希望で家事全般……もはや全部と言ってもいいレベルで任しており、朝ごはんは毎日用意されていたのだが、今日はない。

 

 一人暮らししていた頃みたいに、自分で目玉焼きとトーストを作って食べたてみたけど、食べ終わっても伊織は出てこない。


「なんかあったのか?」


 気になって彼女の部屋に行ってみたら……もぬけの殻だった。

 家中を探してみても、書置き一つ見つからない。

 しかし、


「なんだこれ?」


 手がかりは見つかった。それは、長い髪の毛。

 もちろん俺のではなく、伊織は短髪で、統華は最近うちに来ていないので……肩までありそうなこの髪は、誰のでしょうか?

 ……攫われたと見るのが妥当かな?

 一先ず、他に無くなった物はないか、もう一度家中を洗いなおしたが、金銭関係や貴金属類、ゲーム機などは全部あり、伊織だけが狙いだったのだろう。


「……あれか」


 とりあえず学校に休む連絡を入れた。





 キー、プシュー。


 新幹線で2時間、隣県のとあるマンションへと向かった。

 なんでここまでやってるかは分からないが……探偵みたいな気分で楽しいからいいや。

 この推理が間違ってたら速攻で警察行くけどね。


 さて、メモ書きに書いてある住所に着いた。

 標識を見ると、『川上』。

 インターフォンを押し、


「伊織、いるか?」

「ダーリン!」


 かなり逼迫した伊織の声が聞こえてきた。

 やっぱりここだったか。

 持ってきた針金を駆使して数分で鍵を開け、


ガリギリ


 目に飛び込んできた光家は……伊織と彼女によく似た一人の女性が、カッターで斬りあっている、地獄絵図。

 ……帰っていい?


「ダーリン、加勢して!」

「えぇ……」


 まあ、乗りかかった船だし。泥船だけど。

 落ちていたカッターを拾って刃を出し、2,3回素振りをしてみる。

 ……いいカッターだなぁ。


「お~、やりますか?」

「よろしく」


 伊織似女性が横なぎに振ったカッターを、縦振りして受け止める。

 右上、右下、左下、突き!

 適当に振り回されたカッターを全て捌き切り、相手のカッターを叩き落して、眉間ギリギリで止めた。


「強いですねぇ~」

「色々訓練してるんですよ」


 会長に感謝。

 さ、これで多少は冷静に話せるかな?

 置いてあった食卓に3人で座る。


「えっと、伊織と同居している、イグノこと辰海悠馬です」

「伊織のお姉ちゃん、シェンラこと川上沙織です」


 やっぱりシェンラさんだったか。


「で、さっきのカッターチャンバラは何ですか?」

「うちの家では挨拶ですよ」

「ダーリンならすぐ順応できるって」


 この環境で生きていけるのはGくらいだよ。

 やっぱこの家やばいよ、なんか強めの香水で誤魔化しているけど、かすかに鉄の匂いがして……絶対リスカの血の匂いだ。

 メンヘラ一家か。


「そういえば、お姉ちゃんはどうして私を連れ去ったの?」


 それも聞かずに戦ってたのか……。


「いえ、ちょっと恋しくなっちゃって。ほら、UAOの中でミワちゃんとイグノがキスしてたじゃないですか。寂しくなっちゃって」

「……へー(脳死)」

「もー。お姉ちゃんってば、ちょっと登校日数やばいから、休日にしてよ」


 ちょっと何言ってるか分かんない。


「じゃあ、そろそろ帰っていいですか?」


 もう帰りたかったのだが、


「……少し、昔話をしましょうか」


 沙織さんの雰囲気が一変した。

 会長やラチックに似た圧を感じる。


「昔話?」

「ええ。昔々、ある一般的な家庭に、第二子が生まれました」


 うん、絶対一般的な家庭ではないよね。


「とってもとっても可愛い子でしたが、なんと小学校の時にいじめにあってしまいました。では問題1、なぜいじめられてしまったのでしょう?」

「……顔の傷のせい」

「ピンポン。かわい過ぎてと迷ったかもしれませんが、生まれつきの顔の傷のせいです」


 まあそんなところだと思ったよ。


「もちろんいじめっ子達には私が制裁を下してましたが、そのトラウマで彼女は病んでしまい、不登校になってしまいます」


 ある所の設定どこいった?


「あの時の伊織ちゃんも……可愛かったですねー。親は何故か蒸発していたせいで、お姉ちゃんが面倒を見るのですが、健気で母性をくすぐられ……最っ高でした」


 ……目がイってらぁ。

 横目で伊織の方を見てみたが、流石にちょっと引いてる希ガス。


「ですが、高校生に上がるのを転機に、引きこもり脱却を目指します。地元の学校には行きたくないから、新幹線で2時間の適当な学校にしました。お姉ちゃんは不安でしたが、その頃に発売されるVRMMOで会うことに」


 あとは大体分かる。

 高校も最初の方は行けなかったが、5月にゲーム内でるろ剣を勧められ、学校にいけるようになった。


「で、それがどうしたの?」

「もう逃がしませんよ、伊織♡」

「逃げるよダーリン!」


 俺の腕を引っ張って、伊織が逃げようとしたが、沙織さんがいつの間にか持っていたカッターを振り降ろし……ギリギリで転がって避けた。

 頭の中に某ポ〇モンの戦闘開始BGMが流れる。

 一先ず俺も落ちているカッターを手に取り、刃が交わった。


「さっき俺の方が強かったでしょう?」

「あれはただの挨拶ですよ。確かにあなたが強いのは認めますが、まだあなたはこの競技の本質を理解していない」


 こんなのが競技と呼ばれてたまるか。


 上、左下、右腕、左足!

 また振り回されるカッターに対応して、一瞬力を入れて相手のカッターを撃ち落とし……壁に刺さっていたやつを手に取って、俺の頬に傷がついた。

 さらに、沙織さんは体勢を低くして下から切り上げ、受け止め……左手にもカッター!

 

「うおおおおお!」


 左手一つで白刃取りをし、横に力を加えて刃をへし折る。

 やっぱり慣れている感じはあるな。

 

「やりますね。こういうのはどうです?」


 沙織さんは飛び上がって……天井にも十数本のカッターが突き刺さっていた。

 結構天井は高かったのだが、彼女の高身長(約180)でカッターを掴み、上から投擲する。

 机の下に隠れて投げられたカッターを避け、イスの足を掴み、


「オラァ!」


 思いっ切り投げた。

 なんとか避けたみたいだが、猪突猛進タックルで追撃する。

 沙織さんは両手に持っていたカッターを投げてきたが、横から飛んで来たカッターがそれを撃ち落とし、タックルが直撃した。


「ふう。俺の勝ちだ」

「肉弾戦は禁止なんですけどねぇ」


 こんな競技(?)にルールなんてねえだろ。

 さて、勝利したからには、帰ってもいいのだが……チラっと背後を振り返ってみると、沙織さんがリスカ用意をしていた。

 この人も自分が人質とか言い始めるのか。


「人質がどうなっても良いんですか!?」

「マジで言ったよ」


 よく見ると、この人の手首もボロボロなんだよなぁ。

 ……よし。

 ゆっくりと彼女の方へ歩いていき、隣に座って、カッターを持っている右手を上から握った。


「大丈夫です、落ち着いて」

「でも、私の伊織ちゃんが……」

「だから、大丈夫です。なにせ、沙織さんは最高の姉ですから」

「そんなことない」

「あります。確かに直接的な要因を与えたのは俺だけど……ミワに傷を付けさせたのは、功恵さんですよね?」


 難しい話でもない。

 普通、ゲームにコンプレックスは持ち込まない。

 ミワも、俺が傷のことを笑ってしまった時はすごい剣幕で怒られて、自分から付けたようには思えない。

 彼女に近しい人が、傷を付けるように指示したのだろう。

 例えば、姉とか。


「それが無かったら、俺もるろ剣をお勧めできなかった」

「それは多分関係ないですよ」

「いや、るろ剣パワーだし。とにかく、沙織さんが伊織を救ったんだ」


 スッと沙織さんの右手からカッターを取り上げ、頭を撫でる。

 伊織もこれで安定するから、多分沙織さんにも効く……ハズ。


「……一つだけいいですか?」

「何?」

「私……可愛い?」

「うん、可愛いし、美しいよ」


 安心したのか、軽く笑った後、沙織さんは眠ってしまった。

 伊織も安心したら眠ってたし、もう安心ってことでいいのかな?



「ありがとね、ダーリン」

「ってか、お前もうちょっと援護してくれよ」

「ダーリンならいけるって思って。最後は援護したでしょ」





 次の日。


「空前から空上に繋がるよ。これが立ち回りの基本にるから」

「なるほど」


 ガンツをボコボコにするために、ミワからス〇ブラを習っていると、シェンラさんがやってきた。


「ああ、シェンラさん。リスカしたりしてませんよね?」

「してませんよ」


 よかった、安定してるみたいだ。

 ス〇ブラに戻ろう。とりあえず空前から空上を擦って……軽装のシェンラさんが、背後から抱きついてきた。

 中々大き目の彼女のアレも当たっている。


「ちょ、ミワが見てるから!」

「いやー……私も好きになっちゃって」


 は?

 ヤンデレが二人になるとか、冗談じゃないんだが?


「え……あなたにはギコーがいますよね?」

「あの人とはそういう関係ではありませんよ」

「大好きな妹と被っていいの?」

「むしろ3P志望です」


 ……一番まともだと思ってた人が、一番イカレていた件。

 ミワに救援の視線を送ったが、ニコニコしていて……ダメだこりゃ。


 ちなみに、川上母もヤンデレで、逃げた夫を追いかけて消えた。

 出所は分からないが、毎月大金の仕送りはある。

 現在地はエジプト。


 再開したばかりで悪いのですが、投稿頻度が3日に一話に落ちます。

 原因は……作者のマイページ見れば分かるよ。

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