友達、参戦
「今からログインする」
「いいか、美味しい魚だぞ、美味しい魚」
「分かってるよ」
ついに、東間と妹の統華がプレイ開始するらしい。
笑いながらパーティを組んで狩りをしてたリア充どもを、後ろから殴り飛ばしてやろうかと悩むこともなくなるのだ。
「じゃ、初期リスで待ってるぞ。赤い髪が目印だ」
「おう。お前より良いスキルを引いてやるからな」
「美味しいのだぞ」
そう送ってメールを閉じ、俺もログインした。
二人ともあんまり設定を凝るタイプではないので、そこまで時間はかからないだろう。
メールの通り初期リスの周りを歩き回っていたら(止まってる判定対策)……急に自分のファッションに自信がなくなってきた。
客観的に言うと、赤髪に黒スーツとサングラス(某ケイドロ番組のハンターみたいなやつ)だからなあ。
近くの食料屋で聞いてみた。
「すみません、これから友達が来るんですけど、このコーデで大丈夫でしょうか?」
「完璧だよ。文句の付けどころがない、実にエレガントなコーデだ」
少し笑ってるような気もするが、店番のNPCは満面の笑顔でそう言ってくれた。
「ああよかった。これ3つ下さい」
「毎度あり」
それから、歩きながら購入した魚の丸焼きを食べていたら……がたいがいい男が来た。
「お、お前、悠馬か?」
「ああ東間。今回もイグノだ」
「俺もガンツのまま」
確か、好きなアニメキャラの名前だっけ。フッ、甘いな(謎)。
こいつも、俺と同じく髪色だけ変えたようで、濃い青色になっていた。
「で、お前その服はどうした?」
「店員さんにお勧めされた。似合ってる?」
「あ、ああ、似合ってるよ」
なんか顔が二ヤついてる気もするが、何故だろうか。
「なあ、止まって話そうぜ」
「俺は止まんねぇからよ、俺が止まんねぇかぎり、その先にお前はいる!だからよ……止まるんじゃねぇぞ……」
「名言を汚すな。で、なんで止まんねえの?」
「スキルのせいで止まったら死ぬ」
ガンツの周りをグルグル回りながら、俺のスキルの話をした。
今まではそこまで気にならなかったけど、友達といるとウザいな。
「という訳で、止まったら5秒で死にます」
「マジかよ。ていうか、マグロって美味しい癖に、あんまり強くないな」
「結構お世話になってんだぞ」
そう言って、ガンツの頭にチョップをかましたら……死んだ!?
急に倒れこんで目を開かな……開いたわ。
確かに死んでたはずなのに、生き返っている。
「どういうことだってばよ」
「……これが、俺のスキルだ」
「チョップ!」
「……(死→生き返る)」
死んだら生き返るって、そんな生物いるのか?
ニコニコ笑いつつ、もう一回チョップをしようと構える。
「もうその辺にしてくれ」
「チョップ!」
「……(死→生き返る)」
これ以上伸ばすのも面倒だから、さすがに止めた。
少し顔が険しくなっているが、許してくれるようだ。
「で、なにがモチーフなんだ」
「マンボウだ」
ペンギンの解説によると、マンボウは一匹で3億個もの卵を産む。
それなのに、海がマンボウで埋め尽くされない理由は、すぐ死ぬかららしい。
だから、マンボウの能力も、すぐ死ぬ代わりに命をストックできるというもので、最大で30回死ねる(今は俺のせいであと27)。
ストックは、3分に1つ追加される。
あと、面白そうだという理由で、半分までなら街中でも攻撃を受ける特別使用。
「面白いスキルもらったなぁ」
「お互い様だろ」
これは残った統華さんにも期待が高まります。
「てか遅くね?」
「いや、もう来る」
口角の端を上げながらガンツがそう言った時……オレンジ髪の少女がログインした。
ほらなっと親指を立てて笑うガンツにドン引きしつつ、その少女に話しかける。
「久しぶり、統華ちゃん」
「久しぶりー。こっちではファニーって呼んでね(キラン)」
あれ、あんな子だっけ?
ちょっとってか、大分キャラ違くね?
現実では俺に対して敬語なのに(東間もキモイ時は敬語を使われる)。
「お、俺はイグノ」
「俺ガンツ」
「……何で歩き回ってるの?」
まあ、手をグーパーしてるだけでもいいんだけど、5回気を抜いたら死ぬからなあ。
ファニーにもスキルの説明をしておく。
ガンツも自分の取扱注意と言って、チョップで死んでた。
「で、モチーフは?」
「ベニクラゲ」
ペンギンの解説によると、寿命がない生物。
詳しい説明は除くが、このクラゲは、若返ることができ、『不老不死』と言われることもある(食われたら死ぬ模様)。
その能力として、死んでもステータスと体の大きさを代償に生き返ることが出来るらしい。
ただし、それだとただのチートだから、一定のステータスを下回ると生き返れなくなる。
ちなみに、遅れた理由は、釣れたクラゲに触れたくなかったから。
「お前ら兄妹どんだけ死にたくないんだよ」
「俺はすぐ死ぬからセーフ」
「そっちは命が儚いのよ」
「……(死→生き返る)」
「ねえ今なんで死んだの?言葉のナイフ?」
画して、自傷と生き返りの歪んだパーティが完成しました。
キャラの名付けは、魚の最初の文字を入れるようにしてました。
マグロ →ゆうま
マンボウ→とうま
そのせいで両方に『ま』が入ったけど、ベニクラゲの『べ』が入る名前が思いつかなくて断念した。
ちなみに『統』には『すべる』という読み方があり、一応べが入ってる。
解説
【マンボウ】
能力:命を30個までストックでき、3分に1つ溜まる(死んだあとに一瞬無敵時間)
すぐ死ぬ
ほとんどは作中で語った通り。
寄生虫が多いとかの特徴もあったが、いい感じの能力にならなかった。
世界一卵を産む生物。
生き返るというよりは代わりがいるって感じだから、押しつぶされたとかだと、人が入れる最短の空間に生き返る。
【ベニクラゲ】
能力;死ぬとステータスと体の大きさを犠牲に生き返る
ステータスが一定以下になると死ぬ
これも作中で語った。
小さくなるとは年齢的に小さくなるということだが、精神には影響なし。
レギュラーキャラはなるべくメジャーな生き物にしたかったけど、生き返る系の能力にもしたかったため泣く泣く採用。
あとあと空想生物も入れていくつもりだけど、こいつは実在する。
初めて存在を知った時はかなり驚いた。
中には2億年以上生きてる個体もいるとか。