VS《バグ・インセクト》
『第4回イベント、開催。イエーイ』
相変わらずホログラムのザ・フィッシュが、イベント開催の宣言をした、
今回の会場は特設フィールドで、草むらや洞窟内など、簡単なギミックがあるらしい。
あとは5対5の《タイムスリップ》と練習したルールと同じだ。
そして、初戦の相手クランは《バグ・インセクト》……日本語訳で《虫・虫》だった。
「ゴリラの学名かヨ……」
「あっちもうちのクラン名に混乱してそうだけどな」
まあ、名前だけで圧力を加えられると考えれば、無しではない……かな?
「さて……初戦どうする?」
「チームAで」
と、いうことで、初戦の構成は、人数以上のパワーが出るイグノ ラチックペアに、後衛に突撃するファニー、安定した前衛のマドカに後衛のRexになった。
ちなみに、チーム名は安定のAである。
「絶対に勝つぞー!」
「おー」×5
出場する五人が、特殊フィールドに転送されて……今回のフィールドは海の森だった。
第一回イベントの海藻ではなく、ちゃんと木のやつ。
ちょっと視界が悪いが、刀や槍を振る分には問題ないスペースはある。
というか、ファニーの機動力や、Rexの燃焼の話を考えると、ちょっと有利なのかもしれない。
とりえず、前衛にイグノとマドカ、中衛にファニーとラチック、後衛にRexの陣形を組んだ。
相手の構成も、前衛2、中衛2、後衛1で……中衛の一人に見覚えがある気がするけど、誰だっけ?
まあいいや。
『デュエル開始ィィィ』
機械音声がして、俺たちを隔てていた半透明な壁が消えた。
「〈殺戮魚の声〉」
ラチックにいつものをしてもらい、出方を伺っていると……相手は全体的に下がっていく。
罠でもあるのか?
「どうする?」
「突撃ぃぃぃ!」
相手が下がるのに合わせて、距離を段々詰めていき、
「〈イルティレン・オーダー〉」
「ッツ」
いきなり頭に衝撃が走り、一瞬頭が真っ白になった。
すかさず相手の特攻役が突っ込んできて、短めの刀を振るう。
ガキン
マドカが籠手でなんとか防ぎ、俺の〈ノックバック〉で一旦距離をとった。
「何があったんだ?」
「刺激臭、ね」
確かに、鼻の奥にツーンとした痛みが残っている。
口呼吸のみにしたら、刺激臭の攻撃はほとんど聞かなくなるだろうが、効果はそれだけではないらしく、全ステータスダウンのデバフが付いていた。
「ラチックがいてよかった」
「もっと言いなさい」
「愛してる」
さて、彼女の[消怖気 リフェクション」の効果で、デバフは軽減されているが……後衛あいつしかいないし、いいか。
「ロケット発射ァ!」
「〈ラウド・コンフラグレイション〉」
「〈立体機動〉」
いつも通り、目くらましと同時にファニーを突撃させた。
これで相手の後衛を倒すか、2人を引き付ける位はできるだろう。
彼女が多くの人を引き付けている間に、電撃作戦を
「ヴッ」
Rexの声が聞こえて、振り返ると……さっき中衛だった奴が、Rexに襲い掛かっていた。
距離を詰めている間に、木の中に紛れて後衛の方に回り込んだらしい。
『イグノ、カバー』
「言われなくても!」
ラチックの指令を聞いてから加速し、Rexの方へ全力で向かう。
加速の時間が残っていなかったから、とくにダメージは与えられなかったが、Rexは残りHP4割で生き残れた。
「大丈夫か?」
「なんとか」
相手(女)の特効役は……なんかクナイとか持っているから、くノ一と呼ぼう。
結構速いから、そういう感じのスキルかな?
そして、くノ一は一つの巻物を取り出し、
「[越次収 リトスロール]」
そう言って、中央に書かれている『收』という字に手を突っ込み……短めの忍者刀を取り出した。
アイテムを取り出すのは少しタイムラグがあるし、俺みたいに木刀だけしか取りださないとかならいいが、好きなアイテムを好きな時に取りだせる鱗器ってことか。
くノ一が右手に忍者刀、左手にクナイで攻撃してくる。
まず左上から迫って来た忍者刀を、ギリギリで[クマ魚の返り血]に合わせて防いだが……俺の左手には何もないから、止められない。
腹に刺さるよりはマシだから、左手で無理やり止めようとしたが、高い素早さで避けられ、腹にクナイが突き刺さる。
忍者刀の方が刺された時にヤバいから、出来るだけメリケンサックで防いで、クナイは容認する。
最近は忘れがちだが、俺は耐久型……いや、最近はもうバランス型か?なので、そこまで痛くはなく、
「〈アクセルブロー〉」
CTが上がった加速を使って、殴り飛ばした。
しかし、忍者刀で防がれたせいで、そこまでのダメージにはならない。
まあ、残りHP的には俺があと8割で、くノ一はあと7割。このままいけばダメージレースで勝てる。
「こっちはなんとかなりそうだ。Rexは前衛の援護を優先してくれ」
「わかったアル。というか、ラチックに言われてもうやってるネ〈油爆発〉」
◇
「〈スドレイン〉」
相手の手が伸び、私の腕に食らいついた。
それに、HPがドレインされているわね。
「〈ブラックランス〉」
伸びていた相手の腕を、槍で断ち切った。
でも、腕自体はもう一度生えてきている。
他のキズは治っていないから、マドカみたいに全身の再生ができる訳ではないのかしら?
……頭の中に彼の声で、「右手だけ治るとか上条〇麻かよ」と再生された。
「交代頼む」
「ああ」
マドカが相手をしていた鎌使いと、腕が伸びる人が交代した。
「〈死神の鎌〉」
相手の鎌が巨大化し、横なぎに振るわれた。
槍の先端で止めたけれど、
「クッ!」
「オラァ!」
少し吹っ飛ばされてしまった。
マドカの方に行かれても困るので、すぐに持ち直して反撃した。
鎌なんて使いにくい武器を使うってことは……おそらくスキルは鎌補正ってところね。
力は圧倒的に負けているし、少し集中しようかしら。
「〈首狩り〉」
「〈リングス・トライデント〉」
首に迫って来た鎌を、3つに分かれたトライデントの一点で止めた。
「ハァ!?」
「〈古流槍術・閃光突き〉」
鎌を振り払い、左脇腹を槍が貫いた。
その時、マドカが相手をしていた腕が伸びる人の腕が、鎌の人に繋がれて、
「〈体液供給〉」
「センキュ―」
腕が伸びる人のHPが減って、鎌の人のHPが回復していく。
しかし……腕の人のHPは完全回復していた。
「どういうこと?」
「すみません、思いっきりドレインされたっす」
……マドカの9倍にされたHPで、一気に回復したらしい。
「〈セカンドサイズ〉」
二つ目の鎌が出現し、両手に鎌が握られた。
……少し、本気を出そうかしら?
一斉に振られた鎌を、槍の先端と反対側の先端で、その両方を止める。
二つの鎌を、一本の槍のみでいなし、
「ウソだろ!?」
「〈薙刀〉」
左肩から右わき腹まで切り降ろし、そこそこ削れたけれど、腕の人の能力で回復してしまう。
そして、腕の人のHPは、マドカによって沢山のHPがある。
「すみません」
『……やりなさい、Rex』
「え、いいの?」
『やりなさい』
「……〈|油爆発《オイル・エクスプロ―ジョン》〉」
ドカン
マドカごと巻き込んで、Rexの爆発を食らわせた。
彼女は火属性が弱点だから、結構多く削れた。
「え……え?」
『もう一回』
「〈油弾〉」
マドカを貫いて燃える油が腕の人に当たり……マドカのHPはゼロになって、死んだ。
ついでに腕の人も倒せたのは僥倖。
「お前ら仲間じゃねーの!?」
「必要な犠牲よ〈古流槍術・閃光突き〉」
動揺している鎌の人に、槍が刺さる。
◇
「〈隠遁・透過〉」
「消えんな陰キャ野郎!」
この忍者、Rex狙いに切り替えてきやがった。
汚いなさすが忍者きたない。
「分かるかRex?」
「えっと……右上!」
彼女の油操作で、大体の位置は分かるが、連続でやられると加速がなくて、対応しきれない。
Rexの右腕に手裏剣が刺さった。
「あーもう怒った。〈木檻〉」
この前【鬼六】が使っていた戦法で、くノ一を捕えた。
ちなみに、周りが木で埋まってるから出来たことで、普通の状態だったらちっちゃな檻しか作れない。
こういう部分でも、地の利がある。
さらに、
「〈花剣舞〉」
加速はないが、辺りを回る斬花が、相手のHPを削っていく。
あんまり期待してなかったけど、想像の倍くらいペラペラで……あと1分くらいあれば削りきれるかな?
やっぱりスピード型には全体攻撃だね。
「〈投擲〉」
なんか手裏剣やらクナイやら、いろいろ投げつけてきたが、そのほとんどを木刀で叩き落す。
くノ一は、その片手間に檻に穴を開けられないか試していたみたいだが、あいつの攻撃力ではそう簡単には破れない。
「燃やしでもしない限り無理だぞ、諦めろ」
「へー、燃やせばいけるってこと?」
巻物から何かを取りだして……起爆札。
「ッツ〈繭〉」
「もう遅い!」
そう言って、起爆札が爆発し、
ドッカーン
周りの油も燃えて、HPがなくなった。
いや、誘導はしたけどさぁ。
◇
「〈殽徐狩り〉」
「〈リングス・トライデント〉」
トライデントと鎌がぶつかり合う。
力のステータスでは圧倒的に負けているけど、この程度なら技術でどうにでもなるわ。
「……化け物が」
「否定はしないわ。フッ!」
さっきから目を着けていた箇所に槍を入れて、相手の鎌を折った。
「もう意味わかんねえ……」
「ちょっと脆い部分を見つけ出して、そこに攻撃を集中させただけよ。〈古流槍術・閃光突き〉」
槍が鎌の人の頭を貫いて、倒した。
まあ、今回の一番の功労者は、相手の後衛ともう一人を引き付けて、何故か勝っているファニーなんだけどね。
……いや、分割しようかとも思ったけど、イベントが長すぎになっちゃう。
多分、イベント中こんな感じです。
一話一話が長くなる分、更新が遅れるかもしれません。
【ゲンゴロウ】
能力:劇臭
全ステータスダウン
やばくなったらカメムシみたいに、臭い液体を発する虫。
田んぼとかにいる。
【アメンボ】
能力:忍者
相手のくノ一。
もうなんか色々忍者っぽいことができる。補正もかかる。
アメンボって忍者っぽいよね。
【水カマキリ】
能力;鎌補正
水中に住んでるカマキリ。
カマキリだから鎌補正は常識。
今回一番早く思いついた。
【水蜘蛛】
能力:忍者
ファニーがいつの間にか倒してた。
……いや、糸とかだと前の【女郎蜘蛛】と同じになるから。
同じ能力でもいいとは思うけど、流石にスパンが短すぎ。
蜘蛛って忍者っぽいよね。……ね?
【ヤゴ】
腕が伸びる人。再登場勢だから、どうしても知りたい人は一回イベントを見てね。