VS《タイムスリップ》
『第4回イベント開・催』
7月の始め、4回イベントの告知があった。
ルールはクランのチーム戦で、人数差のアドバンテージを無くすために、5人だけ選出して、5対5で戦うらしい。
とりあえず、《海馬組》も召集をかけて、
「……どうする?」
「主語をつけなさい」
「編成どうする?」
どのくらい前衛がいたらいいとか、ラチックのバフでどれくらい変わるかとかが、いまいち分からないんだよなぁ。
どっかで実験してみたいんだけど。
その時、ある人からチャットが入って、
「イベントの模擬戦をしてみませんか?」
……ちょうどいいな。
◇
もう察してると思うが、チャットの送り主は《タイムスリップ》のジャロイーさんで、もちろん俺は二つ返事で了解した。
《海馬組》と《タイムスリップ》で、決闘場の一室を一日貸し切りにし、いろんな編成を試していく。
「さて、最初は絶対に勝ちたい訳だが……出場したい人!」
「はい」×10
みんな元気ですね。
色々考えた末、単体性能が高いファニーとミワ、前衛のシェンラさんに、高火力アタッカーのアンペルとガンツの5人になった。
「……ダーリンが居なきゃ力が出ない」
「お前は某国民的ヒーローか?」
「お姉ちゃんで我慢しなさい」
やっぱりこの人シスコン入ってる気がする。
「でも、イグノはいた方がいいんじゃないの?」
「そうだそうダ」
「いや、俺なんてただの器用貧乏な半端者だぞ?」
どうしても状態異常がキツイとか、瞬間出力がいるとかでもなければ、俺の役割なんてほとんどない。
潤滑油みたいなことしかできん。
「でも、イグノには精神バフ効果があるシ……」
「ねーから。さっさと行って来い」
と、いうことで、初手はガンツ、ファニー、アンペル、ミワ、シェンラさんの5人を選出することになった。
がんばれよー。
広い決闘場にて、前衛にファニー、ミワ、シェンラさんで、後衛にガンツ、アンペルの陣形を組む。
半透明な壁の向こうでは、《タイムスリップ》の人たちが前衛2、後衛3の陣形を組んでいた。
前衛側にはルケさんがいるが、ジャロイーさんは見えない。
あの人の能力は特殊だから、いないのは結構助かる。
他の人たちも野球の時に見た気がしたが……顔を覚えるのが苦手な俺は、能力を覚えていない。
まあ、アンペルは頭がいいから覚えてるだろうし、大丈夫だろ。
そして、十分に時間が経った後、
『デュエル開始ィィィ!』
始まった。
まずは相手の前衛2人と、こっちのファニー、ミワが衝突する。
「〈ポイズンソード〉」
「〈一閃〉」
ファニーが、相手の……誰だ? とにかく、ギザギザ頭の剣使いと毒の剣を重ねる。
だが、ファニーの方がステータスが高いみたいで、押し勝てている。
まだスキルが見えてないのが不安だが、なんとかなるかな?
次にミワの方を見ると、
「〈流墜漸〉」
「〈ニードリック〉」
体中から棘を出せる人が、ミワの相手をしていた。
スキルのお陰で誤魔化せているが、彼女の力のステータスは低めなので、自在に棘を出せる相手に攻めあぐねている。
それを見たガンツが、棘君の方に弓を射て……相手の投石に迎撃された。
確か、野球でピッチャーをしていた人だ。
何本も連続で矢を放つが、投石で全て撃ち落とされ、たまにガンツ本体にまで攻撃してきた。
やっぱり攻撃補正がない分、遠距離の刺し合いになるとキツそうだ。
シェンラさんがカバーに入るも、一人で二人を抑えられている、不利な盤面だ。
あとはアンペルなのだが、ガンツのついでに投げられた石を避けたスキに、
「〈伸びる腕〉」
「エ!?」
彼女の肩を、伸びてきた腕が掴み……相手の陣地まで引っ張られていく。
あいつ、前も【浦島太郎】に釣られたし……まあ、能力が強力だからマークされてんだろ。
「ッツ、〈700ボルト〉」
「〈パーツガード〉」
掴んでる腕に電撃で反撃したアンペルだったが、鱗器の効果か、全然ダメージが通っていない。
そして、ルケさん(盾、硬い)と腕が伸びる人で、アンペルを攻撃していく。
クソ、誰かカバーに行けないのか?
さっき余裕があったファニーの方を見てみたが……復活の途中だった。
体の大きさ的に、既に2回は死んでいる。
そして、相手のギザギザ頭は……デカくなっていた。
「あれ、何があったんだ?」
「私見てたっす。あのギザギザ頭の人、ファニーさんにやられた後、大きくなって復活してたっす」
なるほど、ファニーとは逆に、死ぬたびに強くなる能力か。
さすがに制限はあると思うが、死ぬたびに弱体化するファニーとは相性が悪い。
「……これ、どうするのぜ?」
今回のルールでは、決闘中に一度、10秒だけ参加していないメンバーからアドバイスができる。
何て言おう?
「……最善手を取る」
口出しする相手を、相手陣地で囲まれているアンペルに定め、
『爆・散!』
「……イエッサー。〈サンダー・バースト〉」
彼女は自爆魔法を使い、できるだけミケさんと腕が伸びる人を削って、退場してもらう。
あそこまで絶望的な場面だと、これくらい思い切りよくした方がいい。
さらに、電気で一瞬視界が封じられている間に、
「〈シューティングスター〉」
腕が伸びる人に向けて、ガンツの矢が飛んだが、
「〈タートルビット〉」
ミケさんが噛みついて、止めてしまった。
さらに、ファニーもギザギザ頭にやられてしまい……
「これは……負けかな?」
しかし、今回のメンバーにはガンツがいる。
「一人でも多く道連れにするぞ」
さっすがガンツ君。
まずは、ギザギザ頭をシェンラさんに足止めしてもらい、ガンツの矢を当てる。
投石で何回か死んでしまうが、まだストックは少しある。
「〈フレンド〉」
ミワも投石を避けながら棘の人を足止めしてもらい、さらに実体のあるデコイで、ギザギザ頭にリソースを回し、
「抜刀術〈葬流漸〉」
「〈マグネッターΩ〉」
デコイミワが片手、シェンラさんがパンチを受け止めてもう片方の腕を止め、数本の矢が引き寄せられるようにギザギザ頭の脳天に刺さり……復活せず倒せた。
その後、投石と棘でやられたミワの屍を越えて、もう一人くらい道連れできるか頑張っていたが、投石がキツ過ぎて無理だった。
初戦は負けか。
ちょっと今回は相性が悪かった。
腕が伸びるやつ、棘を出せるやつ、投石のやつ、ミケのスキルは、野球回のやつを見て下さい。
【ミロクンミンギア】
能力:進化
既知で最古の魚とも言われるすごいやつ。
段々進化して今の種類になったんだね。
弱体化より使いやすい分、復活回数は3回と少ない。
あと、これでも強すぎるから、防御も少し低くなっている。
※この情報は2022年9月の物です